あらすじ
羽野千夏は、民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。“消えない記憶”に興味を持ち、認知症グループホーム「風の里」を訪れた。出迎えたのは、「色武者」や「電波塔」などとあだ名される、ひと癖もふた癖もある老人たち。なかでも「くノ一」と呼ばれる老女・ルリ子は、夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの彼女が発した「おろんくち」という言葉に、千夏は妙な引っ掛かりを覚える。記憶の森に潜り込む千夏と相棒の大地。二人を待っていたものは……!
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Posted by ブクログ
法医昆虫学シリーズとは、また毛色の違った一冊。主人公は、民俗学を学ぶ女性で、人間が歳を取って「ボケて」しまっても、最後まで消えずに残る記憶について研究している。
...と思ったら、イキナリ学校からドロップアウトする高校生の話に変わって(^ ^; 正直、「何が起こってるんだ!?」と困惑しながら読み進める。年齢も違うし、全く関係の無い二人の時間が、とあるきっかけで重なり合い、相乗効果でお互いに成長していく様が微笑ましい。
そして主人公がフィールドワークのために通う老人ホームの、三癖も四癖もある(^ ^; お年寄り達のキャラが良い(^ ^ 敵役の設定も見事。敵対関係から徐々に主人公を認め始める、主任のキャラもリアルで◎
後半に向かうにつれ、予想もしていなかった展開が訪れ、基本「ほのぼの」している本作でも、まさかのサスペンスシーン(^ ^; いや、落差が大きい分、ドキドキもひとしおというもの(^ ^;
法医昆虫学シリーズでもちょいちょい顔を出す、伝奇的なカラーが前面に出ており、「民俗学者の孫」である私には大好物(^o^ エンタメだけではなく、老人介護を取り巻く問題など、問題提起もさり気なく含まれており、一粒で二度も三度もおいしい一冊です(^ ^
Posted by ブクログ
素晴らしい作品。その一言に尽きる。
民俗学の謎を追い求めるロマンをしっかり満たしてくれ、現代から将来への課題である介護についてもしっかり描写されている。
とりわけ印象に残ったのが老人たちを生き生きとコミカルに描いている点。作品全体が暗くならずに済んでいる。
この本で出てくる様々な課題、介護も民俗学も家庭問題も終わりは見えないという点で、グループホームがこれからどうなっていくか、結局ルリ子が見たものは何だったのか、大地の家庭問題・将来はどうなるかということに詳しく触れられていない。その辺はやや現実的だが彼らの未来は明るいだろうとの印象で読み終わることができた。
Posted by ブクログ
「介護民俗学」というヤツみたいやな。
主人公は、民俗学を専攻してる学生。
消えない記憶に興味持って、老人介護施設でしばらくお世話に。
用語説明など
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「口頭伝承」
(あの…口移しと別モンですよ!w)
文字による記録に頼らず、人の声や言葉によって、ある文化的な情報、知識、物語などが、人から人へ、世代から世代へと伝えられていく形式や、その内容そのものを指します。
「口頭伝承」の特性を活用した非薬物療法(薬を使わない治療法)が、認知症のケアやリハビリテーションで使われてるみたい。
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みんな認知症で、会話が成り立たない中、老人達と話ししながら、記憶を探していく。ここの施設の老人達は、問題児で、他所から、ここに移動…
介護方法もルーチン化されて、ある意味、心が…
主人公が、老人達と一緒に記憶を探るうちに、二次的に事件を解決!
老人達も生々として…
でも、現実は、そんなに一人一人に寄り添えないんやろうな。そんな事してたら、施設の人、体もたないし。
ここの施設も3人だけで、老人達を対応してる。
現実と理想が乖離してて、なかなか難しいような…
お給料も安いみたいやし…
その理想を実現する為に、頑張ってくれるのかな。女性初の新総裁は!
(この時点で、総理大臣になるかは、まだまだ予断を許さない状況…)
Posted by ブクログ
問題行動ばかり起こす老人を集めた介護施設(老人ホーム)を訪ねた民俗学を研究する大学生、羽野千夏。各種の老化症状により記憶が消えていく老人たちにも残る記憶の中に口伝による民俗学の可能性があるのか?
母親の極度の過干渉で高校生活に行き詰まりを感じる立原大地、ネット世界に逃げ道をみつけ消耗する生活を続ける中、「おろくんち」という言葉を探しているという掲示板の書き込みを見つける。
老人介護の現場はこんなに甘いものではないと、お叱りを受けそうな展開もあるんだが、介護問題と民間伝承民俗学とミステリーを見事に融合させたストーリーは読ませる。
久々に川瀬七緒を読んだが、やはり上手いなぁ。
Posted by ブクログ
予想を超える話の流れで作品世界を楽しみました。やっぱり川瀬七緒さんの話は好きだな。
それから、丁度、認知症や介護施設と関わっていて、どの様に接したら良いか分からなかった中で読めてよかったと思う。
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「おろんくち」の言葉が出てくるまで長い!でも、そのおかげで物語の中に入りやすく、謎解きが始まってからのスピード感について行くことができた。
想像以上にゾワッとする場面もあり、驚いた。
途中から、姥捨山の話を思い出していた。
Posted by ブクログ
口頭伝承を研究する大学生が、ある施設のコミュニケーションが取れない老人から『おろんくち』という謎の言葉を聞き出し、その不思議な言葉の意味を探っていく、謎解きのようなお話でした。
核心に迫っていく様子がハラハラドキドキでした。
Posted by ブクログ
川瀬さんのこれまでの作品では、『テーラー伊三郎』が一番好きで、高校生の成長物語と、年齢を重ねた人が新しい時代に合わせた学びを積み重ねていくという、成長×成長のシナジー効果(汗)のお話に夢を感じていました。
彼女の他の作品(昆虫法医学系)は、どちらかといえばおどろおどろしいところが多くて、それは悪くはないんだけど、ちょっと読みたいものと違うんだよなあと思っていたところに、介護+民俗学という新たな組み合わせにドロップアウトした高校生を加えるというやり方が、ぼくにとってはベストマッチでした。
介護の現場のリアリティを残しつつ、そこに夢を加えた程よいバランスが素晴らしいです。敵役がちょっとあまりにデフォルメがすぎてリアリティを損なっている感じはしましたが、まあ許せます。
解かれていく謎がそこにあったのか! というのは驚きではありましたが、消去法で謎に迫っていくところは、学問の方法論そのもので、若手の民俗学者の思考法をたどっている感じはとてもしました。まあ、学問の本道のほうで、新たな発見があったらもっとよかったんですけど。それはエンターテイメントのわかりやすい謎解きとしての妥協点としては悪くなかったのかなと。
参考文献に「驚きの介護民俗学」があがっていて、それが学問として存在していることに、まさに「驚き」ました。ぜひ読んでみたいです。
Posted by ブクログ
「おろんくち」その言葉、電車の中からみつけたウロのような一瞬の光景がしばらく頭を離れない。
認知症の人たちの中に残されていく記憶にスポットライトをあてて進められていく話、主人公の明るく食いしん坊なキャラクターから興味深く楽しく読み進められたが、最後の方はちょっと怖くて1人深夜に読むのは無理だったーー!
大地くんが恐ろしい事件を起こすのではなく、明るい未来に希望を持てる終盤で、ホッとした。
Posted by ブクログ
民俗学の「口頭伝承」を研究する大学生。ひと癖もふた癖もある認知症グループホームの老人たち。母の過干渉に悩み自分の存在価値の無さに追い込まれた青年が1人に老女の奇妙な行動を探り事件を解決する。
なんとも面白い登場人物と人との繋がりに
和やかになれる面白い作品だったと思う。
れる老女・ルリ子は、夕方になるとホームから脱走を図る強者。ほとんど会話が成り立たないはずの大地と記憶の森に潜り込むが……
Posted by ブクログ
ほのぼのテイストの表紙と裏表紙あらすじの「おろんくち」というホラーっぽさから、内容が全然想像できないまま読み始めたけど、想像以上に面白かった。レナードの朝っぽさはどこまで真実なのだろうか。
そこじゃないかも
グループホームが舞台のよくある福祉系の小説。若干、大げさかなと思いつつ読み進める。急に毒親に悩む高校生が出てきて、短編集だったのかと混乱。やがて、千夏と大地が協力して問題解決となる。認知症高齢者の残存機能を理解して活用する、そうあるべきだと確かに思う。やがて、予想しない方向に物語が動く。うーん、そっちの方がすごく気になるんだけど。その犯人の目的とか、人格とか。そんな、もやもやが残る作品だつたかな。
Posted by ブクログ
面白かったし、介護のあり方とかお年寄りへの接し方、考え方など考えさせられたけど、ちょっと話全体として強引かなぁ。
電車から見えるかな?そんなの。
とはいえ、ホームのおじいちゃんおばあちゃんのキャラはとても良かった。