あらすじ
冬の朝の学生寮で、少女が死体で発見された。白い雪に覆われた地面には足跡がなく、警察は自殺として処理する。5年後、生徒会長の馮露葵は、寮委員の顧千千の相談を受ける。いじめ騒動をきっかけに過去の事件の噂が校内に広がっていたのだ。真相を探るべく、彼女は図書館司書の姚漱寒と調査を始める。明らかになる、少女に関わった者たちの苦い過去。そんな折、新たな殺人事件が寮で発生する。しかもその現場は5年前と酷似した”雪密室”だった……冷徹なロジックと青春の痛みが織りなす本格華文ミステリーの新境地!
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Posted by ブクログ
最後まで読んで、5年前の唐梨の事件を追い、馮露葵と姚漱寒が憶測混じりで幾つかの推理を出していたのは、呉莞の事件を追う上での読者へのヒントであったのだと思いました。
今回、馮露葵も姚漱寒も数多の推理を披露しましたが、そのどれもがあり得そうなものであり、そしてそれを犯人が認めなければ確たる証拠は無いというもので、5年前の唐梨の事件の犯人が誰でもあり得そうだと思いました。それは、呉莞の事件の動機が感傷的なものだった事から、動機があてにならないという事からもそう思わせられました。
馮露葵の持つ才能への羨みや普通である事の不安は、先の見えない学生だからこその思いだと思います。頑張って普通になった顧千千と、才能を羨む馮露葵、正反対ながらお似合いの2人でありながら、哀しい結末になってしまったのは残念でなりませんでした。出来る事ならもう少し、2人の絡みを見たかったです。
Posted by ブクログ
陸秋搓の本は何冊か読んでいて、どれも割りと好きだ。
けれどこの本は作者が好きだからというよりも、タイトルの美しさで手に取った。
『雪が白いとき、かつそのときに限り』
実際に雪は事件にとって重要なアイテムではあったけれど、このタイトルの意味としては、思春期の儚さと、その瞬発力・集中力の強さを表したものなのではないか。
足跡のない白い雪に残された死体。
この密室と言っていい状況の作り方は、読んでもよくわからなかった。
平凡な能力しか持たない自分への嫌悪とか焦りなども、そこまで追いつめられるものなのかとも思う。
一生を平凡に過ごす人。
人生の初期にピークを迎えてしまった人。
そうだね。
人生も半ばを過ぎれば、平凡な人だらけだ。
素晴らしい成果を出せる人なんて一握りしかいない。
最後に二人が交わす会話が哀しい。
「普通も……とても貴重なものだって。それに大事にしないと、すぐになくなってしまうものだって」
それに折り合いをつけられるのが、大人ってことなのかなあ。
でも私、子どもの頃から自分が平凡なのはわかってたけど、それによる嫌悪とか焦りは特になかったなあ。
できる人と比べられるのは嫌だったけど。
大多数の人が平凡だって、子どもの頃から知ってたわ。
Posted by ブクログ
華文ミステリ。百合成分ありのライトノベルっぽくもあり。
寮が併設された学校でいじめに遭っていた少女が死亡した。5年後、生徒会長の馮露葵、学生寮長の顾千千、図書室司書の姚漱寒はこの事件の解決に挑むが…。青春小説の趣が強い作品。
「融けたくない」と願う雪の結晶のような少女達。互いにツンツントゲトゲしている会話が雪華の花びらのよう。煌めきが眩しい。
トリックとしてはどうかな?という部分と、華文翻訳文を読みなれてないためもあるのか少し読みにくさがありました。
Posted by ブクログ
タイトルがトリックなどに関係があるのかと思って読んでいましたが、特に関係なかったですね。過去の殺人事件にまつわる女子高生と元女子高生たちの群像劇ともいえる作品かと思いましたが、それ以上に女子高生ものでした。ワイダニットが好きな私としては、この動機筋は感傷的で印象深かったですし、結末もきれいな印象でした。ところどころの描写も繊細。後半は筋を追うのを急いであまり味わえなかったので、後半部分だけでもまた読み返そうかと思っています。
Posted by ブクログ
流行りの華文ミステリ。
日本の新本格の様式を色濃く受け継いでいると感じた。
不可能と思われる謎に対する分析・考察をあらゆる角度から行い検証をし、犯人を絞り込んでいく思考ゲームの繰り返し。
肝心の謎について、密室を作る現場の描写がわかりづらく、図解があるともう少し楽しめたのになぁと感じた。
著者の作風なのか「華」の文化なのか、登場人物どおしの、呼吸をするかのような絶え間ない毒づきあいが自然に繰り広げられる様が妙にくせになりそうだった。
Posted by ブクログ
青春学園物の華文ミステリ。(翻訳)。
ミステリではあるけど、そのはかとなく漂う女学生たちの百合感を楽しんだ感じ。
中国の名前だから馴染むまでてこずったけど、訳が良いので作品に集中できる。
事件を調べ始める動機も弱いし、推理も弱い感じ。でも、この空気感は良い。印象としては学園×百合×ラノベ×ミステリ風味というとこかな。
ひっかかったのは、これって探偵役が犯人っていうNGパターンでは??大御所が満を持してやるならいいけど・・・。
あと、終章で著者と同名の作家設定の人が出てきたけど、このキャラは女性だったはず。そして著者さんは男性だよね???
この終章の語りが入るのもキライじゃないけど、あえて自分キャラを重ねてくるあたりは、遊び心というより若さゆえの顕示欲かなぁなんて感じてしまってもったいなかったかなー。
ちょっともやっとするけど、総合して初の華文ミステリ楽しめました。