【感想・ネタバレ】つけびの村のレビュー

あらすじ

2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。
犯人の家に貼られた川柳は〈戦慄の犯行予告〉として世間を騒がせたが……
それらはすべて〈うわさ話〉に過ぎなかった。
気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された〈うわさ話〉を一歩ずつ、
ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村をゆく。
〈山口連続殺人放火事件〉の真相解明に挑んだ新世代〈調査ノンフィクション〉に、震えが止まらない!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

山口県の山奥、たった12人しか住んでいない集落で、5人の村人が惨殺された。
「連続殺人と放火」というだけでも衝撃的なのに、5/12が殺されたのだから、その衝撃度たるや。

犯人とされたのは、その村の出身で、40代の時に村に住む親の介護を理由に川崎市から戻ってきた男。
しかし両親を看取った後、彼は村の人たちと交流することはほとんどなく、一方的に噂の的となり嫌がらせを受けていたという。
思い余ったうえでの犯行だったのか。

逮捕された直後は犯行を認めていた容疑者は、途中からすべて警察のでっち上げであり、無罪を主張しはじめる。
取材している著者に対しても、一方的に自分の主張をまくしたてる姿は、一種異様だ。
会話が成立していない。

しかし著者が取材をするうえでわかってきたのは、実際に彼は噂の的であったことと、村人から胸を包丁で刺されたことがあったこと。
そして、今回の事件とは関係なく、この少人数の集落で、放火が割と日常的に行われていたこと。
イヌやネコなどが、日常的に殺されていたこと、など。
部外者にはショッキングなそれらの事実も、集落に住む者には笑って話せる日常であることが恐ろしい。

有意義な読書であったことは承知の上で、この本についてはいろいろ問題があると思う。
まず、一応仮名になっているとはいえ、読む人が読んだら誰のことかわかる状態で、ここまで村人の悪行を、村人から聞いた悪口として載せることの意味。
引っ越して集落から出て行った人でさえ、どこに住んでいる、誰と住んでいるとみんなが知っているような関係性の中で、このようなことを書くことは不用意に歪みを生じさせないのか。

村の古老の語りというのも、特定の一人ではなく、何人かの証言を一人の語りとして創りなおしたものだという。
それでは、自分が言っていないあれこれを言ったのは誰だ、と猜疑心が生まれはしないか。

真実を知るためには必要だ、という考えもあるだろうが、この本に限っては結局真実は藪の中なのである。
生まれた場所をいまさら動くことができないような人たちが住んでいるこの場所を、噂と悪意に満ち溢れた場所として書くのは、結局誰のためにもなってはいないのではないか。

読んだだけの私でさえ、その閉塞感に息が詰まる思いだというのに、この集落に住む人ならず離れて暮らす子どもたち家族も、この集落に接した場所に住んでいる人たちも、この本を読んで気持ちに区切りがつけられるかと言えば、それは決してないことだろうし、却って新たな心の傷を抱えなければいいと思う。

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2025年07月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害。この事件を追いかけるルポライターの話。ノンフィクションだが、被告人とのやりとりなどはドラマのよう。うわさの恐ろしさと何が真実なのか・・。精神疾患における裁判の判断基準の曖昧さも感じた。

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2023年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

うーん、、、結局核心的なことは何もわからず。誰がどう思って事件を起こしてその引き金はこうで、、、みたいなミステリ小説のような綺麗なオチはないとしても、もう少し踏み込んだ犯行理由があればよかった。母親への夜這いの話もちょいちょい出てくるのに回収されずに終わってるし。。

有名作なので読んでみたのですが売れた理由がわからないまま終わってしまった。当時の報道ぶりを知ってたらまた違ったのかな。

ただ心神喪失者と心神耗弱者への刑罰のあり方や判決の偏り方への指摘は勉強になった。有名な事件ほど死刑になりやすいとは、、裁判官も結局は批判を恐れて保身に走る公務員ってことですかね。死刑制度自体は無くしてほしいけど、精神障害者を無期懲役にして反省もないまま生かしておいても被害者は何を得るのかとも思う。難しいですね。

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2013年7月21日山口県周南市・須金・金峰地区の郷集落で2件の火災が起こり、3名が死亡した。翌日になるとさらに2名が殺害されていることがわかった。合計5名。5名と親しかった女性一人は生存。被害者女性の夫は村外に旅行に出ていて難を逃れた。

村に住む一人の男の行方が知れず、重要参考人として捜索が行われる。山中で発見し逮捕に至る。

当時マスコミは村でのイジメが動機であるとして報道した。実際にイジメがあったのか実際に現地に出向きインタビューと村の歴史から事件の全体像を探ったものである。

20190617最高裁最終弁論
20190711最高裁判決・上告棄却(死刑確定)
夕方から被害者遺族3名の記者会見。
2名は川村さんの娘。(一人損害へ旅行へ出ていて難を逃れた男性の娘。妻は殺害されている。)
1名は遺族の名を明かしたくないとして不明。

遺族の方のインタビューも載せて欲しかったかな。

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2023年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

集落でずっと生きてきて外の世界をほぼ知らない人たち。村八分で最近もニュースになったし、集落で同じような問題がほかにもあると思う。自分達のルールで生きてしまったから時代錯誤にも気付かない。酒が入って口論したとは言え人を刺したことやボヤが多いのはまずい。寄り合いコープの女性も悪気がなさそうだし。取材対象とはいえそういうたちにインタビューしてるから「冥福を祈る」というしめはちょっと自分には受け入れられなかった。郷土史の記述は面白かった。

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2021年09月16日

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