あらすじ
戦争と無縁に思える芸術も、ときに戦争によって進化を遂げてきた。そんな「不都合な真実」からクラシック音楽の歴史をながめてみれば、驚きの事実が次々と立ち上がってくる。かのモーツァルトも意外と軍国的だった?ナポレオンなくして「第九」はなかった? 博覧強記の著者が大胆に料理する、「世界史×音楽史」の新教養。
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Posted by ブクログ
著者の専門分野である政治思想史と音楽を重ね合わせたもので、世界史の頭の中の再整理もできて非常に面白い。
オスマン・トルコの影響は、言われてみるとそのとおりだが、見落としがちの視点。
Posted by ブクログ
この本の内容はカルチャーセンターでの講演だという。
ラジオでの、あのバカ丁寧な(失礼!)、でも前のめりになって迫ってくるような、独特な語り口が彷彿とする。
それは今、「クラシックの迷宮」を聴いているから?
それはともかく、企図は音楽史を政治史に関わらせて読み解くことだろう。
モーツァルトのトルコ趣味も、墺土戦争、オスマントルコのウィーン包囲の影響があること。
ベルリオーズの幻想交響曲や、ベートーヴェンの第九にも、フランス革命や、その後の自由主義思想が反映していること。
オーケストラの楽器編成(特に金管楽器)にも、国民国家の軍隊が出来上がる時代の要請に応じたものだというところは特に面白かった。
そうか、それでスラブ諸国やロシアの作曲家の曲であんなに金管がバリバリ鳴るのか。
こういったお話だったが、断片的には今までにも片山先生の番組で聞いてきたことかも。
番組や講座だと、ここは実際に音源があったのかな、と想像されるところもある。
「ジャンジャカジャン」は片山センセイ、歌ったんだろうな、とか。
逆に文字だと、複雑な近代史を何度も確認できていい、ともいえるかな。
Posted by ブクログ
著者はラジオ「クラシックの迷宮」の解説をしており、その独特な切り口と番組構成には、毎回驚かされる。そこで選曲された曲は珍しい曲、マイナーな曲が比較的多く、曲自体の魅力に気づかされることが少なくない。他方、曲の合間で加えられる講釈も楽しい。本書はいわばその解説パートに特化したものといえる。
一読してわかったことは、市民革命が先行し、新しい聴衆となる層が多くなると、その層に好まれる曲想や曲の役割が付与されていった、ということだ。ベルリオーズの幻想は、フランス革命後の貴族でない市民に受け入れ、ラ・マルセイエーズを歌った軍隊は強くなった。またベートーベンの曲と種々の革命は密接に関連している。今年はベートーヴェン生誕250周年であり、例年より彼の曲を聴く機会が多い年となる。当時のそうした社会情勢を意識し、新しい響きを求め続けた音楽上の革命に注視してみたい。