あらすじ
成瀬和正、46歳。準大手ゼネコンの工事部担当課長。ホテル建設現場を取り仕切る成瀬の元に、残業時間上限規制の指示が舞い込む。綱渡りのスケジュール、急な仕様変更……残業せずに、ホテルは建つのか?
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Posted by ブクログ
次々に降りかかる難題の連続。でも、何度か書かれているように、使える時間は限られているのだから、品質を落とさずに作業量をこなすには、人を増やすか期限を伸ばすしかない。あるいは段階的納品とか?(建物の場合は無理か?)あるいは、月並みながら無駄を省くとか、過剰品質を避けるとか。併せて『わたし、定時で帰ります。』や『育休刑事」を読むと補完される部分もあるんじゃないかな。現実なら、あとは、(今回ちょっと出てきた程度だったけれど)介護問題とかも出てくるのかも。不足人材は、退職した女性やシニア世代で補う、これは手っ取り早く効果が期待できそう。現実世界にて、「働き方改革=残業を減らす」ということばかりが目立つけれど、この小説にもあったように、(十分とは言えないかもしれないけれど)「働き方」を考えるきっかけになって入るし、ある程度の効果は出つつあるのではないかと思う。小説の方に戻ると、あんなに無理だって言ってたのに、間に合っちゃったのかあと若干拍子抜け。どうやって間に合わせたのか、そこが見たかった。そして、最後はウルトラCの「捨てる神あれば拾う神あり」。
Posted by ブクログ
とても共感できる話だった。
残業は減らしたい。でもやらなければいけないことが減るわけではない。
そして仕事に誇りがあるからこそ、責任があるからこそ適当にできるものでもない。
しょうがないという言葉で残業を容認するつもりはないし、長く勤める上ではワークライフバランスが大事だと思うけれども、それをルールだからと残業なしを強行するのも違うという考えは確かに!と考えさせられた。
そこらへんのビジネス本より実態を捉えているとても良い本だと思った。
ただパートの近藤さんの手取り額が正社員勤務残業ありの自分より高く、現実味を感じなかった。
(安倍前首相の言葉を揶揄したのかな…)
Posted by ブクログ
刺激的なタイトルに惹かれて手に取った本。
小説だけど、しっかり現実に沿った社会問題と具体的な解決がストーリーに盛り込まれていて、お仕事エンタメ小説で終わっていない。
大手ゼネコンの社員・成瀬が現場所長を務める横浜のホテル建設工事は、東京オリンピックを目前にして工期がギリギリな上、現場監督の人手不足、急な仕様変更、労使協定による残業規制、近隣住民からのクレームと問題だらけ。
本社、管理部門に解決策を求めても聞く耳は持たず、現場は疲弊、混乱。そして部下が倒れたり、残業時間の隠蔽を余儀なくされたり、部下が自殺をはかって左遷されるという、もう大混乱の展開。
後半は、少し無理やりな現場復帰と別の問題勃発、予想外な助っ人などドタバタだったけど、成瀬がただ問題を嘆いて終わるのではなく、自分自身の過去、時代の変化と向きあい、1つずつできることから確実に変えていく姿は良かった。
働き方改革、ワークライフバランスは本当に実現できるのか、という成瀬の悩みがすごくリアルで、組織の実働部隊・現場と、上層部・管理部門との問題認識レベルの格差が生々しく伝わった。残業を減らし、働き方を変えることで、仕事の質やプロセスなど妥協するところも出てくるという気付きも、働き方改革の理想を打ち上げて終わりでないところが良い。
また、残業を減らすことで守るもの、それは健康と家族だが、夫の家事への意識改革も必要なことに触れていたのが良かった。家庭での家事分担、夫の子育て参加が実現してこそ、社会全体としての働き方改革といえるんだろうなぁ、と思う。