あらすじ
新たな価値を生む発想の原点は「情報の知識化」だ。膨大な情報をどう整理して最適解を見つけるか。外交交渉、ゲノム編集、AIをテーマに基礎教養、論理構成、説明力のあるリーダー養成のためのプログラム、同志社大学「新島塾」合宿の白熱講義を新書化。
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Posted by ブクログ
教養をもつことで個別の問題を全体的な視野から考えられるようになって、いまの複雑な問題にも立ち向かえるのではと思った。教育で必要なこととか、外交の舞台裏についても詳しく書かれていて面白かった。自分まで講義に参加できてるみたいだった。
Posted by ブクログ
同志社大学から選抜された「新島塾」の学生に対して、理系文系を超えた「統合知」としての教養の意義を伝える講義。
まず、外交官として不足している基礎学力は、「数学」「論理学」「哲学史」だと佐藤優氏はいう。つまり外交官に必須のディベートには、膨大な知識量と論理的な思考力と思考の鋳型形成、つまり個別の問題を束ねて総合的に見て考え、適切な判断が下せる力―「統合知」―が必要だという。
ドイツ語で広い意味での「科学」(Science)を「ヴィッセンシャフト(Wissenschaft)」と言う。ヴィッセン」は「知識」、「シャフト」は「体系を持っている全体性」。中世では、「博識」と対立する「体系知」を意味した。断片的な細かい知識をたくさん持っていても、「体系知」につながっていなければ意味がない。哲学はいっさいの断片的な知識を一つの「体系知」に組織するWissenschaftであるべきだと考えられた。
つまり、重要なのは断片的な知識ではなく、「体系的」「統合的」に組立、考えられるかどうかということ。
この教養講義の核となる、日ソ外交については、歴史的な事実と交渉の経過、今後の展望を講義。こちらは実務を担当してきた方々だけあって、生々しいリアルな論調の展開が進む。それを受けての学生のディベートもレベルが高い。
北方領土問題の発端は、「日ソ中立条約」有効期間中にソ連に一方的に破棄・参戦(1945年8月8日)されたこと、「サンフランシスコ平和条約」の締結(1951年9月8日。ソ連は署名せず)で「南樺太と千島列島の放棄」が書かれたこと。この条約締結当時、日本は「国後・択捉」を「南千島(千島列島の一部)」と考え、両島を放棄したと考えたことにある。一方「歯舞(無人島)・色丹」は、北海道の一部と考えられていた(1956年に「日ソ共同宣言」が出されて国交を回復したが(平和条約締結後日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記)、平和条約は締結されていない)。
この「教養講義」は、「北方領土問題」から、ゲノム解析を題材とした生物学、AIを題材とした数学の講義の様子が伝えられている。
今後のプログラムはどのようになるのだろうか。 大物の登壇を期待したい。