あらすじ
「愛国」が「反日」と結びつく不可解な国・中国。この構造は近世史・近代史の過程で形づくられた。1919年、北京の学生運動を皮切りに広がった五四運動は、現代に続くその出発点である。満洲事変をへて日中戦争へ向かうなかで、反日運動は「抗日戦争」と名を変えて最高潮に達した。本書は、日本・中国の近世史・近代史を政治・外交・経済・社会・思想にわたる全体史として描きだすことで、「反日」の原風景を復元し、ナショナリズムの核心にある「反日」感情の構造を解き明かす。古代から現代までの日中関係を俯瞰する論考を増補した決定版。
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Posted by ブクログ
「西洋の衝撃」(ウェスタン・インパクト)に対して、東アジアの国々はどう対処したのか。開国から明治維新を経た日本においては、明治以降の近代化の過程として捉えられてきたが、隣国の中国(清朝)では、どうだったのか。
本書において著者は、中国と日本の関係について、互いの統治構造や社会構造、経済・財政面がいかに違っているか対比しながら、特に明朝以降の歴史的な推移を叙述していく。
そういった意味では、特に、第一部第3章「明から清へ」、第4章「マクロな動向」は、中国の統治の在り方、社会の流動性が高かったこと、中間団体の特性など重要なポイントを明快に説いており、非常に興味深かった。
そして、第二部において、アヘン戦争以降の中国の変化した部分、変わらなかった部分を叙述した後、第三部では、いよいよ中国と日本の関係が説明される。1871年の日清修好条規における朝貢国に対する見方、捉え方が日本と中国では異なっていたこと、それが台湾出兵、琉球処分を経て、朝鮮での角逐、遂に日清戦争での衝突となった、以上のような歴史の太い流れを、解き明かしてくれる。
一筋縄では分からない中国への理解を助ける図や地図も付されており、とても助かる。