あらすじ
「戦後最大のフィクサー」衝撃の自叙伝。
「闇社会の帝王」と言われた戦後最大のフィクサー・許永中の自叙伝。
イトマン事件、石橋産業事件で逮捕されるなど、数多くの経済事件でその名が取り沙汰されてきた許が、自身の半生を初めて綴った。
日本と韓国を股にかけ、極道から巨大商社、銀行、テレビ局まで、縦横無尽に駆け抜けた許は、そのとき何と戦い、何を願っていたのか。
大阪の朝鮮部落で過ごした幼少期の原風景、日本が狂乱したバブル時代に自ら関わった事件の表と裏、政財界から暴力団までを貫くその人脈、2年間の逃走生活、そして日韓の未来への願い……その全てをここに明かす。
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Posted by ブクログ
『海峡に立つ』は、戦後最大のフィクサーと呼ばれた許永中の自伝である。
中津の長屋から身を起こし、政財界を動かすフィクサーへと上り詰めながら、最終的には逮捕に至るという、その波瀾万丈な人生の濃さに圧倒された。
また、戦後社会における暴力団の影響力の大きさにも驚かされた。作中では山口組の下部団体が多数登場し、当時は現在よりも社会全体に深く関与していたことがうかがえる。
関西の存在感も今よりずっと強く、特に京都財界の描写からは、東京一極集中以前の日本経済の構図を感じ取ることができた。
さらに、作中に登場する福本邦雄や大谷貫一といった他のフィクサーにも興味を持った。
最後に、本書はあくまで許永中自身による自伝であるため、今後は彼を客観的に扱った研究書なども読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
前半の被差別や在日の暮らし、巻末の対談に考えさせられることが多かった。現在、上皇として暮らしている平成天皇の生前退位にも、こんな期待を込めて見つめている人々がいる、ということにも驚いた。もちろんそんな思いでいるひとばかりではないだろうけど。
やはり、誰でも他の誰かの代弁はできないということだろう。
Posted by ブクログ
様々な本で登場するフィクサー、許永中の正体が、少し垣間見えた気がした。
やはり、バブル、国会議員、ヤクザがはびこった70年代からの話はダイナミックで面白い。
大学時代、20代、30代、こんな経験、人脈が出来たら、たしかに無敵だったろうなぁとも思うし、義理を重んじ、弱いものを助けるスタンスは、本当にかっこいいなあとさえ思ってしまった。
Posted by ブクログ
存命のうえに本人著作だけあって臨場感が凄い/ 許永中といえばイトマン事件であるが、そのまえに小学生の頃から回想され初恋なども語られる/ 頭のいい人なのだろうし、剣呑な自身の印象をリセットしたかったのかもしれない/ そして〝い聯合〟〝酒梅組審良連合〟〝会津小鉄〟〝菅谷組生島〟〝古川組初代〟〝柳川組〟〝大谷貴義〟〝山段〟など当時は力のあった団体や人物にまつわるエピソードが良い/ 特にボンノ引退シーンにおける生島から直接の伝聞は価値がある/ 「伝説のやくざボンノ」では生島は描かれず三代目と二人で会ってさばさばと別れるシーンであるが、竹中と生島は同席し涙ながらに抱き合った二人を見たという/ どうしても死後に第三者によって書かれた本は物語的になってしまう/ 知りもしない本人の心情などを書くのは無理がある/ また、KBS京都買収はもちろん、イトマン事件・石橋産業事件など許永中が懲役を打たれる直接の事件に関して詳細である/ ずっと冤罪を訴え、検察の起訴内容などからもそれは明らかなのに、世間の色メガネは外せない/ 検察の顔のために有りもしない罪をかぶったシーンなども印象的である/ 一つ気になるのは、文章から滲み出るナルシズムである/ あと、雅叙園観光やコスモポリタン池田のことをもっと掘り下げて欲しかった/ 言えないことも言ってしまうのがこの手の本の醍醐味だろう/ 許永中のことを書いた「住友銀行秘史」と「反転(田中森一)」も合わせて読むと面白い/ それぞれの立場による見え方の違い/ 相談があると必ず弱い方の味方になった/
Posted by ブクログ
巻末の歴史学者、崔氏との特別対談。
日韓関係が何故改善されないのか、に対する視点がとても良かった。どちらが正しいのか、でなく『一緒に負ける』姿勢が大事など、希望が持てる見解。