あらすじ
神様はいるかもしれない。とぼけた顔をして。
佐藤倫太郎と佐藤林太郎。ふたりは同じ大学陸上部の棒高跳びの選手。周囲からは紛らわしいことこの上ないため、しだいにA太郎、B太郎と呼ばれるようになっていた。
かたや平凡な記録保持者、かたや全国レベルの花形選手のふたりの前に、練習風景を熱心にスケッチしていた芸術学部の女子・石井絵怜奈が、突然、自分も棒高跳びの選手になりたいと志願した。
そんな3人の前に、ある日大きな転機が訪れる――。大学時代と数年後の現在、ふたつの時代を往還しながら、物語は、次第に思いもよらぬ場所へと読み手を誘う。
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Posted by ブクログ
じんわり良かったです。いろいろな運命のターニングポイントがあるんだけど、物語の都合ではなく、本当に生きている感じがして、だからこその先が見えない謎があるようで。
一方で、イカロスの墜落やバベルの塔の神罰のように、真実をつかもうとしたら、神に突き落とされるという神話のようで、運命に抗う人々の強さと、それを突き抜けた先に見えるものの妖しい魔力のようなものを感じました。ただそれでも地に足がついている感じが現代風?
小説としては、短い断片が、時系列をばらばらにして並べられていて、読む側のテンポとしては、良くいうと軽やか、悪く言うと、その世界に引きずり込まれて沈殿していくような凝集感に欠けるように感じられました。