あらすじ
パルコ系クリエーターとして、バブルをど真ん中で経験したヒキタクニオが
自らの仕事と恋愛、青春の日々を回想するドキュメンタリーノベル。
1967年、故郷の福岡を出て東京へ。大学在学中にイラストレーターとしてデビューし、
やがて大規模なグラフィック展覧会「80 sグラフィックパワー展」の顔ぶれに20代で抜擢され、
パルコ系クリエイターの仲間入りを果たす。
それがきっかけで、汐留の国鉄跡地に造られることになった
大型ライブハウス&ディスコ「サイカー PSYCHER」の内外装を任され、
さらにゲームファンタジア渋谷の外壁や店内アートを担当する。
時はバブル全盛時代。数々の変人たちと出会いながら、
充実した仕事の毎日を送る一方で、同郷の恋人と別れてモデルと結婚。
絶頂の日々を過ごしつつも、確実に時代の変化を感じていた――。
解説 日比野克彦
バブル当時、著者が出会った人々
空間プロデューサー、コンセプチャー、デザイナー、
女性のアート系プロデューサー、新進気鋭の映画監督、
広告代理店の営業マン、超能力者、老舗ホストクラブの男、
ヤクザの3人組、銀座で豪遊するキング・オブ・バブル社長、
アニメ「ちびまる子ちゃん」を平成のサザエさんに仕立てた男……
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ヒキタ・クニオ『バブル・バブル・バブル』文春文庫。
ヒキタクニオのクリエイター時代を描いた自伝的な小説。ヒキタクニオがイラストレーターやクリエイターから小説家に転身したとは知らなかった。
1980年代のバブル時代の狂ったような日本の世相を背景に、ヒキタクニオがクリエイターとして成功しようともがく姿にバブル時代への懐かしさを感じた。
バブルに浮かれ、様々な変人たちと出会いながら、充実した仕事の毎日を送る一方で、同郷の恋人と別れてモデルと結婚したヒキタ。しかし、ヒキタの絶頂期はそう長くは続かない……
自分には縁が無かったバブルの恩恵。政界や財界では札束が飛び交い、いつも老若男女が踊っていたような変な時代。今思えば、あの時代は何だったんだろう。
本体価格750円
★★★★
Posted by ブクログ
今思えば、F1もバブルを象徴していた。レースクイーンのハイレグなんて…なんとも恥ずかしい限りの流行だろう… その輪の内側には、面白い仕事、カッコイイ仕事、多額の資金、所謂、富と名声がぐるぐると回っている。 じんむ神武景気 ツーバイフォー2×4住宅 金がないやつは工夫するしかない。俺はアドレナリンを噴き出しながら、アパートの一室で作品を作り続けた。 てっぺん天辺取ったと感じていた 日本電信電話公社 三公社五現業 インスタレーションというアートが興った 企業がアートに金を出す、文化事業によって企業がイメージアップを図るということが起こったのがバブル期だと思う。 東郷神社に行く裏道でしかなかったが 石井聰亙そうご(現・石井岳龍がくりゅう) ポスターの版下はんした 今では、コンセプトという言葉は学園祭の催物を出すときの理由、意味合いなどまで使われている言葉だ。コンセプトはコンセプチュアルアートのコンセプトで、70年代後半からアートの世界では「概念」という意味で使われていた。 今ではコストパフォーマンスやハイパフォーマンスなど付属語が付き「性能」というような意味合いが強くなっているが、元々はアート活動の「行為、表現」という意味だった。 ゴッホはポスト印象派の画家とされているが、ポストというのは「次」という意味を持つので、印象派の問題点を解決して次のアートの展開へと進むことが彼には出来なかったということだ。一方のピカソは、キュビズムによって印象派を丸ごとひっくり返した。アートの使命を全うしたからこそ、ピカソの作品には西洋美術史に於ける絶大な価値があり、彼は存命中から脚光を浴び、絵は高額で取引されたのである。美術評論家は、ピカソのアート的使命をしっかりと判断しているのだ。 綽名あだな 未だ裁判で係争中だから 赤みが勝れば、パープル。青みが勝ればヴァイオレットとなっているが、その赤と青の配分に明確な定義はない。それほどブレが大きい色が紫である。 佐伯社長はポルシェの蒐集家しゅうしゅうかだから 昭和のサザエさんと対比させ、平成のちびまる子ちゃんにしたことが、人々の心を摑んだのだろう。 俺は後に『鳶がクルリと』という小説を書いた YMCAはゲイのハッテン場と呼ばれる場所だったようだ かんげん諫言 どんちょう緞帳の全貌が露わになった キャバレーとクラブが合体したキャバクラ そうこう糟糠の妻を捨てた男というレッテルを貼られた たいよ貸与 スーベニア(記念品) 借地借家方によって借地人は守られ 疲弊した日本がツケを取り戻そうとしているその間隙かんげきを縫って 決して濡れ手で粟の金ではない バブル期は、男女間の恋愛(セックス)に金を使い、平成後期から令和は、一人遊び(自慰行為)に金を使うことになった。 『原宿団地物語』という短編集の中の「天狗」という題名の小説だった さくらももこを偲ぶ会では一目も憚らず号泣したらしい。 何という厚顔無恥か… ゲームファンタジア渋谷 薗田賢次 Kダブシャイン
Posted by ブクログ
平成の御世が終わり、令和になった現在。
戦後、好景気と呼ばれた時代はいくつかあったが、その中でも崩壊とついた好景気はバブル景気だけ。
さて、そんな時代をイラストレーターの二次元から、立体造形の三次元、マルチメディアの四次元を経て、小説家としても活躍するヒキタクニオ氏のドキュメンタリーノベル。
氏の著書の元ネタはこの熱きバブル期の実体験から生まれていたんだと、フリークとしては嬉しい内容。
日本グラフィック展、日本オブジェ展、日比野克彦、谷口広樹、タナカノリユキ、芸術関係に疎い自分としては、ネット環境がまだ発達してないバブル当時のイラストレーター達の仕事環境、食っていくための挑戦段階が実に新鮮でした。
当時、Macは電気屋じゃなくて、画材屋で扱われてたんだそうで。
文化の熟成って、やはりこういう時代に発展するよな。中世の世だって、パトロンがいて、潤沢な資金が唸って回って。世に回るチラシ一枚の見方も少し変わるかな。