あらすじ
日本人の多くは米中貿易戦争の結末を勘違いしている。この戦いは「中国製造2025」とアメリカ製造業の競争などというまともな話ではない。共産党が民間企業に補助金を与えて輸出価格をダンピングし、利益を得る不正な経済構造を潰さない限り、世界経済の低迷は止まらない、ということだ。だから中国の経済構造、サプライチェーン網が「ぶっ壊れる」までトランプ大統領は攻撃をやめないだろう。習近平主席が夢見る一帯一路の「中華帝国」は、帝国の条件である「人口・食糧・エネルギー」を兼ね備えておらず、失敗に終わらざるをえない。そして両国によい顔をしようとする安倍外交は結局のところ、どちらの理解も得られず一人ぼっちの境遇に陥る。しかし、問題はそこからだ。トランプ再選、習近平敗北の状況は孤立した日本に唯一最後の「自立のチャンス」を与えるだろう。これ以上リアルな見方はない、といってよい透徹したビジョンが日米中の角逐関係を射抜く。
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Posted by ブクログ
NHKのNY支局長、ワシントン支局長を歴任された方の著書。流石の取材力と文章力。日本のマスコミではトランプ大統領は、その言動から悪く描かれがちだが、本書では一貫してトランプ大統領の政策、特に対中政策が適当かを力説している。その説明は納得できるものであり、トランプ大統領の見方が変わった。本書発刊時点では予期し得なかった新型コロナの影響もあり、トランプ再選の予想は外れてしまったが、バイデン新政権になっても中国の不正な経済・軍事活動には厳しい姿勢で臨んでもらいたいし、そうあるべきだろう。また、日本は、中国、北朝鮮、ロシアが軍事活動を活発化させる中で、早急に安全保障政策を組み立て直す必要があると感じた本だった。