あらすじ
造り、閉じ込め、永遠に愛す――。あの日から3年。滋賀から東京へと戻った復一の前に、以前よりもより妖艶な気配を身に着けた真佐子が現れる。復一と真佐子。それぞれ以前とは違う立場の中で、情念の炎はさらに激しく、そして複雑に捩じり燃え始める。
岡本太郎の母・岡本かの子が描いた名著『金魚撩乱』、大正時代の破滅的純愛文学を奇跡の漫画化。
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ネタバレだらけの感想です
全体の感想は1巻のところに書いたので、こちらでは原作との違いを中心に。
原作とマンガ版の大きな相違点は、
1.復一の友人である日野が存在しない。真佐子と結婚するのはモブキャラのような別の男性。
2.復一と真佐子には、最後まで肉体関係が無かった。(もちろん、子供もいない)
3.その代わり、マンガ3巻に出てくる秀子とはかなり深い仲だった。(ただし、気持ちは相変わらず真佐子にあった様子)
4.真佐子の結婚と出産は、琵琶湖に留学中に手紙で聞いたもの。
5.真佐子の実家は経営が傾き、むしろ金魚の育成と出荷でやっていくことにした為、複一は真佐子の実家の正式な技師となっている。
6.真佐子の父が亡くなった後は研究費が打ち切られ、独立した金魚屋となっていた様子。
7.ラストは、店裏の繁殖用プールではなく、失敗作を放していた裏の野池で生まれた。
最大の違いはやはり1と2であり、この2つで全く別の物語になったともいえる。
日野の存在で倒錯気味な三角関係を演出されており、それはマンガ版の大きな長所だろう。
ただ、日野の復一への感情が結局どういうものだったのかは少し濁されており、ここに違和感を感じる。
単なる友情や、自分が自分である為の存在というのでは説明がつかず、もういっそBL感情を明言した方がまだスッキリしたのではないかと思う。
特に、3巻後半で次女の父親を復一だと認識しているかのような描写があり、これに関してはもうBL以外では成り立たないのではないか?
復一と真佐子に最後まで肉体関係が無かったというのは、マンガで描くとさすがに盛り上がりに欠ける。
たった2回(だけとは限らないが)とはいえ、関係があった方がよりこの3人の関係を深く、複雑にする効果があっただろう。
ただし、マンガ版ではそれ(さらに復一との子供まで生まれたこと)により、結果的に復一はより不幸になったと思う。
おそらく一生結婚もせず、あの場所を離れることもできず、崖の下から崖上を眺めて一生を過ごすのではないかと思われ、非常に苦しい人生だと思う。
それこそ「純文学」風に言えば、自殺をして終わり、という方がしっくりするくらい。
原作の方はマンガ版ほどまで鬼気迫る感情ではないので、いずれは場所を移り、別の人と結婚するという道もまだ残されていたように思う。
(ただし、原作でもラストは既に30代後半にはなっていたはず)