あらすじ
古代ローマでは、発掘されただけでも数万種類にのぼる貨幣が存在した。貨幣は一般に権力の象徴とされ政府や中央銀行などが造幣権を独占する。だが、ローマでは政界に登場したばかりの若手や地方の有力者も発行していた。神話の神々、カエサルや皇帝たちの肖像、ヤギや北斗七星など描かれた図像も多岐にわたるが、彼らは貨幣を用いて何をアピールしようとしたのか。図像と銘文から読み解く、新しい古代ローマ史入門。
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Posted by ブクログ
貨幣(まあ、当然ながらまだ紙幣は無いのでコイン)に刻まれた図や文字、これは当時のメディアの一つであり、このメッセージを読み解ければ、当時の政治、社会、あるいは権力者側が伝えたかったもののみならず、宗教観まで読み解いていけるのかと。
共和制時代の「選挙対策」から、皇帝のメディアとなっていく過程、あるいは、都市国家独自の貨幣が、ローマの支配下、ローマの権威の下に収斂されていく。
そして、民族毎の神、民族毎の権威から、地中海世界の唯一の権威としてのローマ皇帝の存在が続き、広まり、定着した事が、民族の枠を超えた一神教としてのキリスト教が西欧に浸透し、定着していく土壌となっていった(ということは、シリアやエジプト、北アフリカにおける一神教の土壌でもあると言う事か?)という発想は、新たな知見であった。
ローマ教皇がカエサルの後継者だったのかと。
Posted by ブクログ
古代ローマ史が好きな人には面白い。モノとしての貨幣が好きな人にも多分面白い。それ以外の人には、退屈な1冊と思われる。貨幣(コイン)に刻まれた図案からその意図や歴史的背景をよみとるという解説書でローマ史の大まかな流れがわかっていれば裏話としてよめる。そういえば塩野七生もコインを集めていた気がする。たしかに2千年前の人々が触れた貴重品と思うとそれだけアートであある。
Posted by ブクログ
タイトルの通り、貨幣を切り口にしたローマ帝国史で、ぐっと引き込まれた。読み終わったあとはローマ帝国のことをもっと知りたくなること間違いなし。個人的には、昔、ローマ帝国史好きだったよなぁと懐かしく思いながら、おさらいのつもりで読みました…。
Posted by ブクログ
貨幣から読むローマ史。
ユリウス・クラウディウス朝関連が多いが、西ローマ帝国末期までを概観している。
貨幣の図像からそこに描かれた人物(皇帝など)、並びに貨幣を鋳造した者たちをとらえ、彼らが何を言おうとし、そして彼らがどのような存在であったかを検討している。
紙面の制約からか、皇帝による継承アピールが中心だったように思えるけれど、そこに刻まれた文字(クレメンティアとかそういうの)で鋳造者や皇帝がどういう意図を持っていたか? ということについても概観してあったら嬉しかったかも。
巻末の参考文献がとてもありがたい……。