【感想・ネタバレ】日本の地方政府 1700自治体の実態と課題のレビュー

あらすじ

日本には都道府県47、市790、町745など、1700を超える地方政府がある。一般に地方自治体、地方公共団体と呼ばれ、行政機構のみが存在する印象を与えてきた。だが20世紀末以降の地方分権改革は、教育、介護、空き家問題など、身近な課題に直面する各政府に大きな力を与えた。本書は、政治制度、国との関係、地域社会・経済の三つの面から、国家の2.5倍の支出と4倍の人員を持つ地方政府の軌跡、構造と実態を描く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の地方政府を、鳥の目と虫の目から、また歴史的な発展も加えて、今ある姿とその背景を解説している。
統計データに基づいた解説なので説得力がある。また、諸外国との比較で地方政府を世界の中で客観的に評価しているので、世界の中での位置付けや特徴、ひいては今後どのようにすべきかの示唆が示されていて、とても勉強になる。

以下は、共感したところ。

地方公務員では、ジェネラリストを志向するのか、スペシャリストを志向するのか明確ではない。

地方政府では、多くの場合で総合計画が成功しているとは言えない。企画部門はホチキス部門と揶揄され、各部門が出す計画を束ねる存在に終わることも。

日本の行政機構では、人事、予算、評価、企画、法務の最大5つのマネジメント部門があり、過剰。

政策アウトカムの測定は容易でない。

移動する人としない人の双方から構成される住民の特性を踏まえて、政治、行政のあり方が考えられるべき。

都道府県の存在意義は、警察と教育という地域間再分配、リスクへの対応。

日本での政策の普及は、S字つまりロジスティック曲線を描く。

地方政府どうしは相互参照で政策を補完するため、総体として高い政策形成能力が実現する可能性はある。

地方政府は、その財源確保を国に保障してもらうことと引き換えに、地方税制の税目や税率、地方債の発行の自由度という歳入の自治、責任と権限を放棄した。

地域と都市の調整が国政で論じられていないことが問題。この解消には、地域で政党政治により争点を中央に上げることが必要。

日本の組織は内輪には安心するが、距離をとった関係構築が苦手。試行錯誤を嫌い、明確な組織原理に沿った組織再編が行われない。

人口という尺度だけで政策を行うことは、住民の他の活動を見落としている。

どれだけの負担を背負ってどれだけのサービスを受けるのかをセットで考えることが、民主主義の基本。

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2019年10月09日

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