あらすじ
日本には都道府県47、市790、町745など、1700を超える地方政府がある。一般に地方自治体、地方公共団体と呼ばれ、行政機構のみが存在する印象を与えてきた。だが20世紀末以降の地方分権改革は、教育、介護、空き家問題など、身近な課題に直面する各政府に大きな力を与えた。本書は、政治制度、国との関係、地域社会・経済の三つの面から、国家の2.5倍の支出と4倍の人員を持つ地方政府の軌跡、構造と実態を描く。
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Posted by ブクログ
公共分野に関わるかもしれない人で、今の行政機構に詳しくない人にとてもおすすめです。
著者本人も書いていましたが、地方自治体の在り方について解説するのみで、そこに正負の感情はなく、読みやすかったです。中立な視点でバランスよく書かれていると感じました。
学び
・政党政治の観点から見た国と地方の違い(議会と首長に捻れが起きやすい等)
・国、県、市町村の役割の違い
・地方自治体の成り立ち
・人口は目標になりやすいが、住む人の性質を考えないと行政が立ち行かない
・地方交付税を用いた地域再分配の仕組み
Posted by ブクログ
【人口という基準、画一的な政治と行政の制度、大規模な財政調整制度という三点セットは強固だ。一九九〇年代以降の改革の時代により、さまざまな変化が生じたが、それでも根幹は変わっていない。しかし、これがどこまで維持できるのか】(文中より引用)
身近な存在でありながら、複雑さと多様性でなかなか理解が難しい地方政府のシステム。理解のための第一歩として地方政府がどのように成立し運営されているかを概説した作品です。著者は、父親が市役所の職員であったことから地方政府に関心を持つようになったと語る曽我謙悟。
教科書的な記述が続くために正直なところ読みづらさを感じる部分もありましたが、網羅的に地方政府についてまとめられており、学習のためには適した一冊かと。現在の地方政府が抱える問題を端的に示した部分は特に読み応えがありました。
あまり普段読まないタイプの作品でしたが☆5つ
Posted by ブクログ
本書は、現代日本の地方政府の実態を、政治制度、中央との関係、地域社会・経済との関係から、戦後70年の間に生じた変化と連続性、他国の地方政府との間に見られる共通性と異質性にも留意しつつ、描き出している。なお、「地方政府」とは、いわゆる「地方自治体」のことであるが、本書では、地方にも政治があるのであり、地方における代表と統治の全体を理解するために、あえて「地方政府」という言葉を用いているとのことである。
政治学、行政学、財政学、社会学などの最新の研究成果もふんだんに盛り込みつつ、平易簡明な構成と文章で、日本の地方政府の実像を構造的かつ多面的に明らかにしている良書であり、地方自治関係者には必読の内容であると思う。
本書を読んで、1)現行の地方議会の選挙制度の帰結として日本の地方政治に政党制が根付いてこなかったこと、2)これまで日本の地方政府においては、政策目標として人口が過剰に重視されてきた一方で住民の質への関心が薄かったこと、3)福祉としての住宅政策が欠落してきたこと、4)地方分権改革において地域間再分配の問題が正面から取り上げられてこなかったことなど、いろいろな気づきがあった。
Posted by ブクログ
地方自治体の歴史や政治制度、諸外国との比較などコンパクトにまとまっている。あんまり注目してこなかった分野だが、結構面白かった。特に都市計画や地方活性化などに直結するため、ビジネス的な視点で見てみても面白そう。
Posted by ブクログ
非常に勉強になった。今の地方政府が、どうしてこのような形・制度なのかわかった。縦割りも平素の行政サービスには最も効率的。事態対処のたびに、横断的業務に発展がみられればいいなあ、と思う。
Posted by ブクログ
日本の地方政府を、鳥の目と虫の目から、また歴史的な発展も加えて、今ある姿とその背景を解説している。
統計データに基づいた解説なので説得力がある。また、諸外国との比較で地方政府を世界の中で客観的に評価しているので、世界の中での位置付けや特徴、ひいては今後どのようにすべきかの示唆が示されていて、とても勉強になる。
以下は、共感したところ。
地方公務員では、ジェネラリストを志向するのか、スペシャリストを志向するのか明確ではない。
地方政府では、多くの場合で総合計画が成功しているとは言えない。企画部門はホチキス部門と揶揄され、各部門が出す計画を束ねる存在に終わることも。
日本の行政機構では、人事、予算、評価、企画、法務の最大5つのマネジメント部門があり、過剰。
政策アウトカムの測定は容易でない。
移動する人としない人の双方から構成される住民の特性を踏まえて、政治、行政のあり方が考えられるべき。
都道府県の存在意義は、警察と教育という地域間再分配、リスクへの対応。
日本での政策の普及は、S字つまりロジスティック曲線を描く。
地方政府どうしは相互参照で政策を補完するため、総体として高い政策形成能力が実現する可能性はある。
地方政府は、その財源確保を国に保障してもらうことと引き換えに、地方税制の税目や税率、地方債の発行の自由度という歳入の自治、責任と権限を放棄した。
地域と都市の調整が国政で論じられていないことが問題。この解消には、地域で政党政治により争点を中央に上げることが必要。
日本の組織は内輪には安心するが、距離をとった関係構築が苦手。試行錯誤を嫌い、明確な組織原理に沿った組織再編が行われない。
人口という尺度だけで政策を行うことは、住民の他の活動を見落としている。
どれだけの負担を背負ってどれだけのサービスを受けるのかをセットで考えることが、民主主義の基本。
Posted by ブクログ
地方の選挙では、なぜ無所属で立候補するのだろうか?推薦という実質的な選挙協力を受けつつ、知事や市区町村長が与野党相乗りで支援を受ける光景が地方政府においては常態化している。地方政府では首長の権限が強く、地方議会議員は行政執行部に対して相対での要望を上げるケースが大半であり、国政の構造を踏襲しにくい。
地方自治体と少なからず仕事することがあって、なかなかその構造を理解するのが難儀だった。とくに都道府県と市町村という2層構造は、都道府県が明治期以来の国の出先機関が出自で、市町村は地域コミュニティが合併を繰り返してできた土着性の機関であるため、なかなか異なった性格を持っている。
警察や教育、保健福祉のような広域行政を担う都道府県にとって、大きな市ほど補完すべき業務が少なくなる一方で、町村は人的支援を含めた様々な業務が発生する。とくに災害対策の土木工事や農水関連の補助事業など、町村がその現場となる歳出予算も多いため、都道府県の出先機関は町村と一体的に動くケースも出てくる。
また教育や警察など、人的リソースによるユニバーサルサービスは都道府県がその人件費を負担し、ジョブローテーションを通して域内で均質な水準を維持する政策が採られている。その結果都道府県職員の多くは教員や警察官となり、オペレーション能力に長けた組織が成り立つ。そしてそこには政治的なイデオロギーが介入する余地はあまりないのだ。
果たして、47都道府県と1718基礎自治体という現在の構造は適正なのだろうか?そこには粒度の違う様々な業務を最適化していくという高度な因数分解が必須となる。スケールメリットのための広域合併は限界となりつつあり、すでにDXのような地理的制約を伴わない業務効率化が出始めている。もしかしたら、遠く離れた自治体同士で一部事業を統合するような動きもあるかもしれない。
Posted by ブクログ
2024.9.16
兵庫県知事の問題があったので、地方政府を知るために…
ただ、何も知らずにそのままニュースを鵜呑みにして、斎藤知事を否定したくない。