【感想・ネタバレ】河合隼雄と子どもの目 〈うさぎ穴〉からの発信のレビュー

あらすじ

児童文学を自らの生きる指針として読み、こよなく愛した心理臨床家の一人である著者が、子どもが主人公の物語を繊細かつ緻密な臨床家の視点で読み解く一冊。本書は1990年にマガジンハウス社から刊行された『〈うさぎ穴〉からの発信』の復刊。カニグズバーグをはじめ、エンデやケストナー、ギャリコ、また宮澤賢治や今江祥智、長新太、佐野洋子など、人生に多くの気づきや示唆を与える素晴らしいファンタジー作品の数々。

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Posted by ブクログ

児童文学と子どもたちがもつ豊かな世界について、臨床心理学者河合隼雄が現代を生きる私たちに向けて書いた文章を集めた著作。
とても読みやすく、かつ、胸に刺さる本だった。
読み始めてすぐ、ペーター・ヘルトリング作「ヒルベルという子がいた」について語られる文章を読みながら、涙が止まらなくなった。
ヒルベルというかんしゃくと頭痛持ちで、周りからは悪い子とされている子どもと、マイヤー先生という素晴らしい先生とが出会う特別なシーンを、臨床心理学者河合隼雄ならではの視点で読み解いていて、その深い洞察力と、児童文学を読むこと、そして子供たちへの真摯な視点に感動を覚える。
だが、私が涙したのは感動によるものだけでなく、自分が、マイヤー先生とも、もちろん河合隼雄とも違う視点しか、そうした子どもたち、また障害を持つ人や、自分と異なる人を見られていなかったことを、突きつけられたからだ。
この本の中で「硬直したマジメ」と表現されている部類の人間、自分は正にそれだと感じた。
今までも、認知症のお年寄りや、精神障害を持つ人と接するたび、自分はうまく接する事ができていない自覚はあったが、この本を読んでいて、河合隼雄の冷静な指摘にドーンとした衝撃を受けた。
この本を通じて感じるのは、河合隼雄がいかに子供たちを尊敬しているか、という事だ。
子どもたちの無限の想像力や感覚がいかに優れているか、彼らがどれだけ大きなものと日々戦っているか、尊敬を持って語られる言葉に、自分が根拠もなく、子供や、他者に対して上から目線で見ていたことがとても恥ずかしくなり、後悔に胸が締め付けられる気持ちがした。
子育て前、介護前にこの本が読めたことはせめてもの救いだ。きっと読まずに子育てや介護をしていたら、上から目線で思うがままに導こうと空回りし、苦しい思いをさせてしまうことが多々あったはずだ。
もちろん、この本を読んだからといって私という人間が根本から変わる訳ではないので、マイヤー先生や河合隼雄のようにつぶさに子どもたちを見られるようになるわけでは無いが、少なくとも読まないままだったら、私はいつまでも自覚がないまま「硬直したマジメ」であり続けただろう。
自分の硬直ぶりを自覚して、それを少しでもほぐすために、本書で紹介されていた児童文学をじっくりと読んでいきたいと思った。
現代社会に生きづらさを感じている人たちにぜひおすすめしたい一冊。

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2020年11月23日

Posted by ブクログ

心理療法家の河合隼雄さんが素晴らしい児童文学の数々を紹介してくださる。児童文学は子どものための読み物ではなく大人にとっても子どもにとっても大切なものであるというメッセージが繰り返される。創元社がつけた帯は、現代人のたましいの危機は、ファンタジーと切り離されたときから始まった、と。
私は私のために児童文学をもっと読まなければならないと強く思った。ただ、そういった使命感からだけではなく、紹介される本はすべて間違いなくおもしろい匂いがぷんぷんするのだ。こんなにたくさんの素晴らしいことが保証された本と出会うきっかけをこの1冊から頂けて有難い!
中には8才の娘もそろそろ読めるものもあるだろう。親娘で同じ本を読んで感想を言い合うなんて夢のような体験がすぐそこにありそうでワクワクする。
残念なのは本書で度々登場するカニグズバーグの作品が現在では入手困難であること。きっと素晴らしい作品たちなので、復刊されることを切に願います。

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2020年05月10日

Posted by ブクログ

児童文学って大人になってから読んでも響く。子供の頃夢中になって読んだファンタジーは今でも面白いと感じるし。数々の懐かしい本をまた読みたくなった。

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2024年04月07日

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