【感想・ネタバレ】黄のレビュー

あらすじ

島田荘司推理小説賞史上最高傑作と大評判!
聡明な盲目の少年がインターポール捜査員とともに、凄惨な〈幼児目潰し事件〉の真相に迫る!

中国の孤児院で育ち、裕福なドイツ人夫婦の養子となった盲目の少年、阿大(ドイツ名ベンヤミン)。
彼は、黄土高原で発生した六歳児が木の枝で両目をくり抜かれる“男児眼球摘出事件”に強い関心を持つ。凄惨な事件のなぜ起こったのか? 犯人は? お目付け役のインターポール捜査員・温幼蝶と母国へ旅立ったベンヤミンがたどり着いた真相とは――。
「この作ほどこちらに多くを考えさせ、また創作執筆時にも劣らない、さまざまなストーリーをこちらの脳裏に想起させた候補作は過去になかった」(島田荘司)と激賞された新たな探偵ミステリーがここに誕生!

<島田荘司推理小説賞>
2009年に創立された中国語で書かれた未発表の本格ミステリー長篇を募る文学賞。応募作は台湾、香港、中国、マレーシア、イタリアなど世界各国から寄せられる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

いい小説だった。殺人が起こるのだが、殺人が起こったかのような感じがしない。不思議な小説。冒頭の「叙述トリックがあります」に引っ張られて読んでしまうのだけど、どこにも叙述トリックはなくて、叙述トリックあるある詐欺で、ぐいぐいと読んでしまった。こんな仕掛けを小説に施すなんて! 天才か!

1
2020年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

始まる前に読者への挑戦があって、絶対見破ってやるぞと意気込んだのに見事に騙されました!

まさか!
まんまとしてやられた。

子供時代と現代が交互に語られる形式で、ブリッジが必ず前の文と繋がりを持たせてるのが良いですね、犬は吠えないのあとに犬の鳴き声から始めるとか好きな繋ぎが大量にあります。

メインの眼球くり抜き事件と殺人?が少し弱いけど、主人公の出自がかなり面白いのでカバーされてると感じた。
これぞ映像化不可能なトリックですね。看板に偽りなし。

0
2025年06月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目の見えない少年が語り手&探偵役というだけで、どう物語られていくのか気になるが、読んで見ると初っ端からホームズばりの観察力を駆使した推察が繰り広げられ、面白さで読み進めることができる。
海外ミステリではあるものの、ミステリとしては非常に国内ミステリと読み心地が似ている。
それも新本格に近いケレン味。
そして新本格に感じたある種の屈折よりも、まっすぐというか純粋というか、樹形図の別のノードが進んだ先を見ているかのようだった。
ありがたいことに中国語の人名が同一ページ内でもすべてにルビが振られているのがとても助かる。




以下、真相に言及した感想としては……





・日本と中国では仕掛けの効果が異なるのでは?
主人公の少年は、現在はドイツに暮らしているが、生まれた国である中国に対して誇りを持っており、それが支えにすらなっている。
どうしてそこまでこだわるのか。自分が読んでこの部分に疑問を抱いていた。
この部分に関する「何故」が明確に描かれずに物語が進行するからだ。
中国の作家だから? アイデンティティの拠り所として、中国人であることの重要性があるのか? 書くまでもない自明のこと?
このように、海外の作家ということに理由の在り処を考えたりもした。
けれども、この「何故」をミステリという観点から考えたとき、語り手の正体にピンとくることが出来た。(人種が違うというところまでで、黒人というところまでは特定できなかったけど)
で、本題としては、この自分が気づくに至った回路は中国を母国とする人間にとってはどうなるのか?ということ。

(自分)
中国生まれであることへの主人公のこだわりの理由への疑問

ミステリ的仕掛けへの疑い

ここで自分が抱いた疑問点に関して、中国を母国とする人たちは同じように疑問を抱くのだろうか?
日本人である自分からすれば、そのこだわり自体の動機が謎として目の前に立ち現れてくる。
けれども、母国の人たちにとっては、それは当然のものなのかも知れない。またはやはり同じように疑問に感じるのかも知れない。
(ちょっと容疑者X論争の笠井潔の指摘を思い出した。見えないという死角の可能性が、ある層に発生し得る点において)
そして、疑問に思わず気づけなかったとしたら、この仕掛けのもたらす効果は、きっと外国人である自分とは異なった衝撃となるのではないか?
本作、わりときわどいのでは?

・叙述トリックはひとつ?
「この小説には一つ叙述トリックが含まれている」
阿香(アーシャン)=楽楽(ローロー)
作中内で言及される叙述トリックは上記だけれど、語り手が黒人であるというのも叙述トリックであり、ここの解釈の仕方が分かっていない。

・単に面白い作品だからという理由だけではなく、これ翻訳して日本人に読ませたらどうなるんやろ?というような翻訳者の企みを感じる(良いと思う)。

1
2020年01月05日

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