あらすじ
死者を想うとはどういうことか。生きることの苦しみは何に由来するのか。曹洞禅の根本道場・永平寺に二十年、死者供養の聖地・霊場恐山に十年、“生きて在ること”の根源を問い続ける著者のブログ「恐山あれこれ日記」を精選し、編み直して一冊とする。よるべなき現代人におくる思索と洞察の書。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
霊場恐山の院代に着任した著者が解説したブログ「恐山あれこれ日記」のなかから、編集者が抜粋したものを一冊の本にまとめています。思想家の内田樹がこの方法で多くの本を刊行していますが、両者の考えはもちろんさまざまな点で異なっているものの、どこか思考のリズムに近いものがあるように感じられます。「ブログを書く」という型が、思考をかたちにしていくことに影響をおよぼすのでしょうか。
内容は、「あれこれ日記」というタイトルが示すように多岐にわたっており、恐山にまつわる出来事を紹介したり、著者自身の日常の体験のなかから読者の興味を引くようなものを語ったりしているものもあります。他方で、『善の根拠』や『仏教入門』(ともに講談社現代新書)にまとめられるような、著者自身の仏教および禅にかんする思想がつづられているものもあり、まさに硬軟とり混ぜた本になっています。
「刺さる言葉」という本書のタイトルは、編集者が提案したものをそのまま採用しているそうです。恐山をおとずれる人びとの信仰のかたちが率直に述べられたことばを紹介している記事などは、タイトルの通りに感じられるかもしれません。