あらすじ
智治は学校の図書室で、(ちどり文庫)という学校所蔵とは違う蔵書印が押された本を見つける。学年が変わってもその本は置かれたままだった。シングルマザーの母と、海岸そばの団地に中古物件を購入し新しい生活を始めて智治は団地内で偶然、同級生の朝海と出会う。彼女はあの(ちどり文庫)本を手にしていた。インターネットで調べたらこの団地の中に「ちどり文庫」は存在するというが、管理人は不明だった。その頃智治は夜になると上の階から聞こえてくる奇妙な物音に悩まされていた。怖くなって母親に相談するが、やりくりしてやっと購入した部屋でもありあまり気にしないよう言われる。一方、自治会長の雑務を手伝うことでようやく「ちどり文庫」の管理人を教えてもらい、雨の午後朝海と二人で、団地の中の「文庫」を訪ねるが……。(「小鳥の蔵書印」)他に「猫町ガールの夢」「はなれの管理人」の三章立て。
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Posted by ブクログ
海のそばの団地・七色海岸団地に母と2人で越してきた智治は、学校の図書室で"ちどり文庫"と蔵書印の押された児童書を見つける。そんなことも忘れかけた夏のある日、同級生の朝海が"ちどり文庫"を探しに智治の団地を訪ねてくる…。
実用的な"ためになる"本が好きな智治、小説や児童書を愛する朝海、本で埋め尽くされた部屋に住むおばあさん・入江さん、保護猫のボランティアに勤しむ女子大生の真理。
この小説に出てくる人たちは、中心人物だけでなくそれを取り巻く人々も皆優しかった。
読んでいて、どんどん引き込まれる。
海のそばで、人との本との繋がりを感じながら暮らす。"ちどり文庫"のある七色海岸団地は素敵なところだと思う。
Posted by ブクログ
とても良かった!
地域の人が運営する文庫を題材にしてるみたいなので買ってみたんだけど、物語の中では文庫は現在閉鎖中。小学校の図書室で学校のものではない本(文庫の本だった)を見つけた男の子から話が始まり、文庫のあった団地を中心に、章ごとに主人公が代わって進んでいくオムニバス形式。現実にありそうな地域や家族を見つめつつ、ファンタジーになり過ぎずに全体に程よく善意でまとめていて、読後感が爽やかでした。
Posted by ブクログ
神奈川シーサイドライン沿線あたりが舞台のモデルでしょうか。1話ごとに人と人がつながっていく連作短編です。帯には「猫と本とやさしい時間」とありますが、それほど猫は関係ないかな。出てくるけどね。