【感想・ネタバレ】雲・山・太陽 串田孫一随想集のレビュー

あらすじ

哲学、文学、音楽、美術など、多方面のジャンルにわたる厖大な著作から、山行と旅に関わる芳醇なエッセイを収録。さりげなく、平易、明晰な言葉で語る、人と自然との関係・対話、深い思索と瞑想、その豊かな叡知の世界。「春の富士」「北穂高岳」「遠い未来の山人に」「風光る日」など、若き日から60年を越える、独創的山の文学の精髄。哲学者・詩人・希有な登山家・串田孫一の、山と旅の随想集。

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Posted by ブクログ

この本に書かれていることは、登山の経験が無い人には想像することが難しい部分もあるかもしれない。山という自然の中での経験が、串田さんの思想に大きな影響を及ぼしていることは疑いようがない。それを都会の真ん中でこっそりと覗かせてもらっているようなそんな気持ちになる。たまに意味するところが分からないこともあるけれど、それでも別に良いと言われているような気もする。通りすがりで良いと、そんな風に。

この本を読んで終始感じていたことがある。私の心の中にある普段は滅多に訪れることの無い場所に仙人みたいな人がいて、その人が話しかけているような、そんな感覚になるのだ。その場所は森のような草原のような、とにかく都会の喧騒を離れた大自然の中である。心地良い風が吹いていて、時間がゆっくりと流れている。私はその場所を知っているけれど、そこにいくことは滅多に無い。むしろその反対側にいることが現実だ。柔らかい笑みを浮かべて話しかけてくる仙人みたいな人は串田さん!? その場所にいることがとても自然。そこで生きている人みたい。

つまり、私の中にも串田さんと共通する部分があるのだと思う。たぶん私自身が山登りの経験から得たものに違いない。私の中にその場所が存在することを串田さんの文章を読んでいるときに自覚した。そこから静かに話しかけれられていることも。たぶん、時々はそこへ行くべきなのだろう。そんな感じがしたのだった。

本の感想としてはどうかと思うが、この本を読んでいて一番印象深いことはこの実感なのであった。

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2019年09月23日

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