【感想・ネタバレ】吉岡清三郎貸腕帳のレビュー

あらすじ

依頼人からの無理難題を解決するのは、おのれの腕1本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段は、ひたすらに不機嫌。「2」という数字とお人好しは、大嫌い。雇われるのはもちろん、我慢ならない。豪快すぎる男の生き方を描いた、7話を収録。期待の新鋭が放つ、痛快時代小説。剣の達人にして、ひたすら不機嫌な男が己の力で無理難題を解決する!

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Posted by ブクログ

犬飼さん作品の中ではこのシリーズが一番好き。
ハードボイルドタッチで人斬りシーンも満載なのに、陰湿さがないのでテンポ良く読める。
なんと言っても主人公・清三郎のキャラクターが良い。名前も聞きたくないほどあの剣豪を毛嫌いし、奇妙な理屈の貸腕業で荒稼ぎ。
いつも不機嫌で口数は少ない。しかし貸腕業の報酬(利息)代わりに女中として働かせているおさえは清三郎を更に凍りつかせる対応の冷たい女。
そんな清三郎とおさえの関係が少しずつ変化していくのは気になるところ。
最終話で出会った髑髏男との再会はあるのか。
第二作も楽しみ。

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2017年05月04日

Posted by ブクログ

これは剣客物というのかな。
こちらで教えてもらって読んだ初めての作家さんだったのだが、なかなか面白かった。

剣の腕を人に貸してその利息をいただく、というややこしい(私には)剣客商売をしている吉岡清三郎。
そこからしてそのちょっと斜めの性格が感じられる。

剣客だからバッタバッタと人を斬ったりしていくわけだが、それが逆に彼の内にある人間性を浮かび上がらせる道具となっていて、流血ものはちょっと苦手な私でもそれほど嫌な感じはしない。

何よりいいのは清三郎のもとで下女として働くおさえ。
借金のかたに清三郎のもとで働く彼女の存在が、この小説全体に感じられるほんのりとした軽味(かろみっていうのかな)を生み出しているといえる重要な登場人物なのだ。

外面の悪さだけからはわからない清三郎の人としての芯がだんだんわかってくると同時に、今後の展開も気になるところ。

これは続きも読んでみなければ。

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2012年02月22日

Posted by ブクログ

時代小説。
吉岡清三郎の仕事は「貸腕屋」である。
剣客。剣の腕は確かだ。それで用心棒なり何なりで雇われればよいのだが、彼は自分を安売りしない。
その代わり、腕を「貸して」生計を立てている。日に一両取るとしても、それは一日一両で雇われているのではなく、値千両でもきかぬ腕を貸してやって、その元本に対する利息を取っているという理屈だ。利息の額は、仕事の危なさや借り手の懐具合、そして清三郎の気分次第。十両や二十両に跳ね上がることもあるが、いずれにしろ、滞納したら取り立てには容赦がない。
彼の嫌いなものは「二」という数字、お人好し、子供に手を上げる者。いつも苦虫を噛み潰したような顔をしているが、それやこれやには訳がある。

依頼人も訳あり揃い。
商売敵に脅された商家、道場破りを恐れる道場主、金貸しの因業ばあさん、母が疾走してしまった幼女、夫の女を始末しようとする旗本の妻。
依頼人から話を聞き、清三郎が腕を貸してやってもよいと思えば、仕事を受けることになる。

吉岡という苗字、実家は憲法染めで知られる京の染物屋とくれば、読者にも追々事情は知れる。つまりは清三郎の家は、一条寺下り松でかの宮本武蔵に敗れた吉岡一門なのである。京流として知られた剣の一族であったが、これを契機に染物屋に転身、すでに何代かを経た。しかしなお、清三郎は自らの真の道は剣と定め、家業を嫌って江戸に出てきた。
家の再興を図りたいが道遠し。卑怯な戦法で家を潰した二刀流の剣士を叩きのめしたいが、相手は泉下に去って早百数十年。歯噛みをしながら金を貯め、家に着せられた汚名を濯ぐべく、捲土重来を期す。
つまりはそれが「不機嫌」の理由である。

家には1人、下女がいる。名はおさえ。人の好い質屋を助けてやったが、質屋は腕の借り賃を払えなかった。その借金の形に質屋の娘を使っている。娘は清三郎の仕事を嫌い、態度は氷のように冷たい。言いつけられた仕事はこなすし、顔立ちも悪くはない娘なのだが、如何せん、家の中は鬱々と暗い。

連作短編7編、それぞれ、清三郎が受ける依頼を描く。
清三郎は決して善人ではなく、貸した腕で血なまぐさい殺しも起こる。だが彼にはどこか一本筋の通ったところがある。この男の造形を好きになれるかどうかが作品を楽しめるかの分かれ道だろうか。
乾いているが、そこはかとないユーモアと、おさえと清三郎の一風変わった関係性も読ませどころ。

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2021年06月14日

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