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匿名
3話目
あるデパートに展示されているマネキンの花は自分が褒められるたびに奇妙な気分になっていた。
褒められるべきは服を作っている芝さんなのに通りがかる人はみんな自分に対して言ってくるからだった。
芝さんは花が飾られているショーウィンドウに季節を連れて来てくれるので春夏秋冬すべてを知ることが出来ているのだった。
自分を見たことでお客さんが芝さんに服を作ってもらうためにお店に入って行き、やがてそれを着て嬉しそうにデパート内を歩くのを見て、自分も動けたらあんな風なのかと思う花。
もしそれができたら芝さんに駆け寄って季節を教えてくれてありがとうと伝えたいと願うが……。
このおはなしは展開が読めなくて最後はびっくりした。
切なさが入り混じるおはなしだった。
予想外のラストだった。人間の心をもったマネキンの物語かと思ったら、心を閉ざしてマネキンのようになった人間の物語だった。彼女の心が少しずつ芽生えていくのではなく、凍った心が徐々に溶けていったのだと読み終えてから気づかされた。