【感想・ネタバレ】嫉妬と自己愛 「負の感情」を制した者だけが生き残れるのレビュー

あらすじ

外交官時代に見聞した「男の嫉妬」、作家として付き合い編集者たちに感じる「自己愛の肥大」。自分自身を制御できない人たちは、やがて周囲と大きな軋轢を起こす。彼らにどう対応すべきか。自分がそうならないためには何をすべきか。小説や、専門家との対論などを通じて、嫉妬と自己愛を読み解く。

目次
第一部 嫉妬と自己愛の時代
第二部 嫉妬と自己愛をめぐる対話
第三部 人生を失敗しないための「嫉妬と自己愛」講座

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Posted by ブクログ

ネタバレ

あの外務省で、外交官として、頑張って働いてきた筆者。
その筆者が、無実の罪を着せられて牢獄に。
それも、政治家鈴木宗男氏の逮捕を不服として、ハンガーストライキまでした人だ。

その報道がある最中、佐藤優という人はどんな人物なんだと何もわからなかった。
当時は、マスコミが悪人を仕立て上げ、大騒ぎしていた。

今、牢獄から出て、悲惨な、人生の体験をしたあと、
佐藤優氏が次々と語ってくれている。

ありがたいことだと思う。

その内容は、思い出したくないくらい、きつかったことも、
冷静に遠くから 見て語っている。

だから、頭に染みてくる。

キリスト教を学生時代、深く学んだ筆者。
だから、無実の罪の人を 知らんぷりできなかった。

その、キリスト教的思想の きちんとした基盤の上に、「世の中の ヒトの有り様 」を、冷静に 見ていることが、
揺らがない 事実として 伝わってくる。

はたらく人間は、四種類。
①能力もあり、意欲もある 人間。
②能力はあるが、意欲がない 人間。
③能力は無いのに、意欲がある 人間。
④能力もなく、意欲もない 人間。

組織にとって、一番 厄介なのは、
③の人間である。

〔2001年、北方領土をめぐるロシアとの交渉が、
「歯舞、色丹2島先行返還」で、大きく前進しようとしていました。〕(162ページ)

その時に、東郷欧州局長に、
「君は平時ならロシア課長が務まるが、今は大変大事な時だ。・・・」と大事な時だから、能力が及ばないということで、配置がえされた ロシア課長。
就任間もない 小泉内閣の田中真紀子外務大臣に
そのロシア課長が、泣きついた。
そのロシア課長は、東郷さんの評価では、
ふだんは、④なのだが、時々③になるから、困る。
という人物だ。

当時のロシア課長は、「外務省がいかに鈴木宗男や佐藤優に食い物にされているか」を直訴。
「宗男悪人説」を刷り込まれた田中真紀子外務大臣は、
鈴木宗男議員との対立を深めていく。
翌2002年 「鈴木宗男事件」が、勃発。

東郷さんは、罷免。退官。
鈴木宗男氏と佐藤優氏は 逮捕。

1人の 無能だが、意欲だけある 人間の
嫉妬心で
2人が逮捕。1人は退官。
日本の悲願の 北方領土返還交渉も、
間際までいっていたものが、15年間、お蔵入りになったのだ。

また、
2000年4月、
鈴木宗男氏が、大統領に当選したばかりのプーチンと会談したことを、
東郷さんから、
先輩政治家、中曽根康弘氏、橋本龍太郎氏、三塚博氏、中山太郎氏に 報告。
その時の、後輩鈴木宗男氏に 対する 元総理の 嫉妬心も すごいものがあった。(49ページ)

筆者は、社会で生きていくための
嫉妬のかわしかた は 
ジャーナリスト竹村健一氏に学ぶ。

竹村健一氏が活躍していた当時、
人からやっかみを受けないために実践していた行動(172ページから)

①お願い事がある時には、必ず自分から相手の所に出向くこと。→大ベテランになってからも、人を呼びつけるようなことはしなかった。
②逆に自分よりも力が上の人間から「会いたい」と言われた場合には、
「絶対に相手の許に行かない」というのが竹村さんのポリシー。→力のある相手のホームグランドに足をふみいれたら、そこで丸め込まれてしまう危険性がなきにしもあらず。
③そして、「人の悪口を言わないこと」。
○また竹村氏は「お金が必要でテレビコマーシャルに出ようと思ったら、すごく注意したほうがいい。」
→商品を褒めたり、『私も使っています』と言ったりしてはダメ。→その商品がらみのトラブルが発生したとき、余波を被る可能性があるから。
○そして「テレビと、書く仕事を兼ねるべきではない。」とも言われた。→「テレビの世界に入ると消耗戦になります。あなたは活字に絞ったほうがいいよ。」
そんな竹村さんはテレビからも言い方は変ですがきれいに消えていきました。(175ページ)

1人の 無能だが 意欲のある 人間の 嫉妬で
逮捕 有罪判決を 受けた 筆者の 激しい人生の 体験。
これを 読書することで 共通の認識を得られる 有り難さ。

もっとも、
ここ10年は、
その 嫉妬心が 薄れ、
自己愛 人間が 増殖中 という現実に加え、
2016年芥川賞受賞の 『コンビニ人間』(村田紗耶香さん著)にいたっては、
自己愛ゼロ の人間が 登場し、受け入れられている。

最終的に
筆者の 嫉妬と自己愛のマネジメントの 極意は・・・
☆キーに、なるのは、「言葉」(199ページー)
【相手の、コンプレックスに 触れるな!】→ それを、触れられると、狂います。そして、発言者に対する 嫉妬と怒り でいっぱいになります。
→鍛えるのは、「自分が言われたら、どう感じるか」という健全なる他者性です。
【自らを、マネジメントして、心の平静を保つ。】(202ページー)
*誰かの 発言や行動に 腹を立てない。また、過度に感動したりしない。
*売り言葉に、買い言葉のー修羅場を避ける。
例 2014年10月に橋下徹大阪市長の公開討論会
→〔◎物事に動じない心は、いろんな知識、教養を身につけることで養われます。〕
ある人間の 信じ難い言動も、その背後にあるものを 「知って」いれば、余裕をもって 対処できる。
→どうしても、反論したくなったとき、怒りたくなったときは、意識して、大きな声を出さない。早口もNG。
◎「ゆっくりと、静かな声で、理詰めの話をするように心がける。」
→人は、自分のー発した声に興奮する。すると相手も、大声で、負けじと反応する。これは、動物のー本能の世界。
【叱り方、褒め方のノウハウ】(204ページー)
昔は、叱る時は、1人の時。褒める時は、みんなの前。
でも、今は、嫉妬を防ぐため、
叱る時も、褒める時も、1人の時に。

そして、自己愛時代の 人間は、極力、叱らない。恥ずかしくなるくらい褒めて丁度いい。

チームとして仕事するには、
実力0の人間には、シカトする。
数字をしめさせて、外していく。
ただ、パワハラ、セクハラと言われないよう、気をつける。

まさしく 筆者自身の
痛みを伴った 壮絶な経験による 知恵が ここにはある。

0
2017年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現代の若者は自己愛が強く、プライドを守るために勝負の土俵に上がろうとしないという指摘は、その通りだと思う。でも、だからといって嫉妬心が薄まっているわけではないのではないか。正確には、嫉妬心を悟られないように周りを冷笑してばかりいるだけに思える。だからこそ土俵に上がろうしないのだろう。今後、勝負どきになって土俵に上がる事を避けようとした時に、この本を思い出すと思う。

0
2019年10月26日

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