【感想・ネタバレ】性の進化史―いまヒトの染色体で何が起きているのか―(新潮選書)のレビュー

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Posted by ブクログ

生き物の染色体と性決定遺伝子の進化や、それらの役割について今わかっていること、まだわからないこと、ゲノム編集でできること、ゲノム編集の生殖医療への応用には倫理的な規定が不可欠であること。語りかける文体で書かれていて、講義を聞いてるみたいにわかりやすい。

Y染色体の上の生きてる遺伝子が50個くらいとか、もとはX染色体だったとか、鳥類爬虫類両生類と、カモノハシ、有袋類、哺乳類で性染色体の仕組みが違うとか、今後も変化はあるだろうとか、とても勉強になる。エピジェネシスのことは聞いたことがある程度で仕組みの理解まではできなかったので別の本を読んでみたい。

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2021年07月05日

Posted by ブクログ

自分はなぜ「男の体」をもち「女の自覚」を持つのか(意識という言葉は避けますが)を理解する1つの方向性は、物質的な「染色体」について理解することでしょう。本書は、内容としてはかなり専門性が高く、著者自ら「飛ばして読んでもいい」としている部分がありますが、著者の長年の研究としてはそこが核心であり、一番熱が入っているところなので、是非チャレンジしたほうが良いと思います。

さて、自然界には様々な性決定様式があり、一度男として生まれていても、環境によって性転換する(実の所は強制的にさせられている)という種もあり、それらは環境に適応して進化した結果なのだということが非常によくわかる事例が多数紹介されています。そういう事例は界隈でもなんとなく知られていて、それをもって「自然界では性が多様なのに、人間はなぜ男女にこだわるのか」のような意見もたまに出ます。しかし、それはお門違いの理論で、あくまで他種は他種。とりまく環境や戦略が違うのですから比較不能というのが答えではないでしょうか。本書のように、人間の性染色体がどのような過程を経て形成されてきたのかを丁寧に辿ればまた違った論になるでしょう。

度々取り上げられているグレイブス博士の衝撃的な論文「ヒトのY染色体は年々退化しておりやがて消失する」を取り上げて論じています。何万年後の人間は、おそらくそうなっているのでしょう。著者はそれに対しそれでも男女の性決定方式はなくならないのだろうと考えています。それは本書をじっくりお読みいただくとして、その時、男の身体は「女性化」しているのでしょうか?何かしらの違いがあるのでしょうか?わかりませんが、もし区別が小さくなっているなら、いろんなジェンダーに関する事柄のうち、勝手に解決するものもあるのかもしれませんね。

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2021年10月27日

Posted by ブクログ

「草食男子」や「肉食女子」という言葉が巷を賑わしたのは随分前だったし、男性の精液中の精子の数の減少を学者が発表してからも久しいが、その後の研究発表は寡聞にして知らないところ、ようやく本書を手に取ることができた。
かなり専門的な内容なので、読後も全て理解出来たとは到底思えないのだが、現在の遺伝学の到達点の一端を知ることができる本である。
難しい学術的な内容を、少なくとも小生のような素人に最後まで興味を繋ぎ続けさせた本だが、出来ればもう少し平易に噛み砕いた本の方がありがたいとも思えた。

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2019年05月25日

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