あらすじ
食の世界が今、激変してきている。分子調理、人工培養肉、完全食のソイレント、食のビッグデータ、インスタ映えする食事……。こうした技術や社会の影響を受けて、私たちの身体や心はどう変わっていくのだろうか。気鋭の分子調理学者が、アウストラロピテクスの誕生からSFが現実化する未来までを見据え、人間と食の密接なかかわりあいを描きだす。私たちがふだん何気なく食べているごはんには、壮大な物語が眠っている。
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Posted by ブクログ
食の学者さんの、優しい語り口と深い洞察で食べ物の過去・未来を語る書。
人間という動物の本能。
食べるものの変化による人体の変化(調理することになったため、他の動物に比べて消化吸収の良いものを食す―そのためにヒトの腸は短くなった)
一家団欒という絵姿は、1950年代から作られた、実は最近のもの。
色んな切り口で書かれている。日常の「食」に対しての考える視点が増えた。
だからどうすべき、という断定はない。
最後の、すごく共感したのは、「…小さな頃に、アニメやマンガ、…などでワクワクさせてくれた大人たちのありがたみを感じるようになりました。その一方で、私は、次の世代に何かワクワクするものを提供しているのか、新しい世界を切り開く可能性を示しているのかと自問自答しています。少なくとも、未来の食に希望は抱き続けたいと思っています」
食って、みんなが関心あって、でも、その関心のあり方が人によって全然違う。
調理器具も発達しているものの、例えば包丁など、器具に置き換えるよりも便利なものはそのまま使われ続けたりする。
生物としてのヒトの遺伝子レベルでの定め、原始的な物理の法則、最新鋭のテクノロジー、人間心理学…すべてを食は内包していて、やっぱり面白い!と思いつつ、、自分なりにどう整理していくかが課題でもあるな、と。
Posted by ブクログ
歴史とともに『食べること』の過去と未来について述べられた1冊。人間と食の関わりがよくわかる。ところどころある筆者のイラストや、章末の漫画が可愛らしかった。
体調や好みを入力すると3Dフードプリンタがそれぞれの栄養や好みに合った個別化食が生み出される。
録音するように料理を録食。
こんな未来が来るかもしれない。
東洋の医者のトップは内科医でも外科医でもなく食医だった。食と健康のつながり。
食べるという行為は生命維持のためだけでなく、アイデンティティの構築の役割もある。所属する集団を結束させる一方で、枠から外れる人は排除される。
世界の食肉生産は40%が牛であるのに、スペインは豚の生産高が世界1位。
中世のイベリア半島ではイスラム教徒とユダヤ教徒とキリスト教徒が住んでいた。それぞれのルールの元に肉を扱っており、キリスト教徒は全ての肉を食べ、ユダヤ教徒は動物の血を食べることが禁じられており、処理したものを食べていた。イスラム教徒は野獣・荷役獣を食べることが禁じられており、牛・羊・山羊のみ食べていた。
8世紀以降、キリスト教徒はかつての支配者であるイスラム教徒と豊かな経済力をもつユダヤ教徒を改宗または追放することで勢力の一掃を図った。
改宗者はキリスト教徒に怯えて暮らし、キリスト教徒が好んで食べる豚肉を食べることが改宗の証拠。豚肉を食べることが踏み絵だった。