あらすじ
作家・姫野伸昌は妻・小雪の死を境に酒浸りだったが、突如周りで不可思議な現象が起き始め、やがて自身の肉体がプラスチック化し脱落し始める。姫野は天罰と直感するが、しかしなぜ? 微かに残る妻の死の記憶──。読者に挑戦し、挑発する先の読めない展開、圧巻のノンストップ問題作1400枚超!!
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Posted by ブクログ
白石一文さん大好きで、たくさん読んできたけど、本作は、主人公が小説家で、福岡の名門公立高校出身であり、父親も作家(しかも”いちろう”の部分が自身の父と一致)という部分など、作者の来し方と重なる部分がいつになく多く、ファンとしてはそそられるものだった。
主人公は妻を亡くしてから記憶が錯綜していて、それを解明していくような物語。”プラスチック化”っていうのがちょっと、SFぽくて文学的じゃないなぁ、なんか、しっくりこないなぁと思いながら読んだけど、なるほど最後まで読むと、なんかつまり、この「世の中」や、「小説というもの」が、無機質な、プラスチックのようなもの…っていう意味が込められているのかな、と思いました。それをただのプラスチックではない、温度のあるものに変えるのは、日々を生きている、私たちの意識…?
作家が小説の中に取り込まれているような妙な感覚が、とても読み応えがありました!
でも非科学的な方法で癌細胞を消したり、病気を念力で治す、みたいなのってあんまり好きじゃないなぁ。他の作品にも余命宣告をされた主人公が西洋医学に頼らず自力で癌を消してしまう、っていうのがあったけど、そういうのって文学的要素よりオカルトっぽさが強調されてしまうので好きになれないな。でも、白石一文作品で私が最も好きな作品の一つである、「私という運命について」だって、オカルトっぽさが充分にあるので、白石一文作品には「科学では説明のつかないもの」って必須なのかも。
いつも、運命というか、人って自分ではどうにもならない何かに生かされているんだなということが感じられて、ドキドキして好きです。
やっぱり「私という運命について」と「ほかならぬ人へ」と「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」が好きだな。