あらすじ
「この業界は腐りきってます」。同業者の証言から不正の実態まで、ウソに塗り固められた不動産投資の世界を徹底的にルポ。「家賃保証」「自己資金ゼロ」「高利回り」すべてウソだらけの手口から身を守る方策まで、現場を知悉する報道記者が詳細に伝授。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
やってはいけない不動産投資
藤田知也氏による著作。
発行日2019年5月31日。
著者は朝日新聞経済部記者。
早稲田大学第一文学部卒、同院アジア太平洋研究科修了後、2000年朝日新聞社入社。
盛岡支局を経て2002~12年に「週刊朝日」記者。
経済部に移り日銀・金融などを担当。
2018年4月から特別報道部に所属。
シェアハウス投資・スルガ銀行不正融資問題などを取材。
2019年9月から経済部。
著書に『日銀バブルが日本を蝕む』(文春新書)、
『やってはいけない不動産投資』(朝日新書)ほか。
両学長のリベラルアーツ大学のおすすめ書籍に掲載されていた為に興味を持った。
本書の終わり部分に参考文献が載っており、そのひとつに
三宅勝久氏の書いた「大東建託の内幕 アパート経営商法の闇を追う」がある。
この著作は私も過去に読んでいたので不動産という世界の危険性は多少なりとも知っているつもりだった。しかし本書を読んでその認識は甘いものであると痛感した。
近年、YouTuberの両学長、リベ大などの影響だろうか。
早期リタイア、FIREを目指すブームらしい。
ただ昔に比べ日本国の経済成長が鈍化している事もあり企業での昇給は僅かなものに過ぎない。
全世界株、S&P500などのインデックスファンド投資も素晴らしい。
ただそれだけで労働者から抜け出す事は出来ない。
どうしても必要になってくるのが不動産投資という魔境だ。
うまく成功すれば確かにFIREすることが出来るだろう。
しかし殆どの人は地獄に陥る。
不動産投資ではなく不動産賃貸業を営むのだという自覚が欠けている。
インデックスファンドでは無いのだ。
物件を丁寧に自分の目で確認し真摯に検討もしない人が不動産業者にはめ込まれ膨大な借金を背負う。
かわいそうだとは思うけれども同情は出来ない。
豊かになる為にはまじめに働く必要がある。
こんな事も分からなくしてしまう不労所得という誘惑の言葉に多くの大企業ビジネスパーソン、医師といったいわゆるエリート達が騙されている実態を見ると悲しい気持ちになってくる。
まず一般人は不動産投資はするべきでは無い。
繰り返すが、不動産投資・・これは不動産賃貸業だ。
もふもふ不動産をYoutubeで視聴した程度でマネできる代物では無い。
著者は銀行が厳しい処分をされている一方で不動産業者の処分が甘い点を指摘している。全く同感だ。個人的な意見だが、昔から政治家の裏金作りに不動産はよく使われており、規制を厳しくする気が政治サイドになかった為ではないかと思う。
印象に残った部分
不正に加担した銀行は業務停止となり、引責辞任した経営陣に数十億円の損害賠償を請求しました。不正を見落とした金融庁は国会などで反省の弁を繰り返し、全国の地銀・信金に不動産融資の再点検を追っています。
それと比べると、不動産行政の落差はあまりに激しい。
これでは不正が蔓延る実態は、今後も大きく変わらないでしょう。
嘘にまみれた不動産業者の勧誘テクニックは、これからもさらに磨きをかけ、進化を重ねていくことだろう。どれだけ慎重になろうとも、将来への不安から投資に興味を持つ人が現れる限り、業者に騙されて損することを完璧に防ぎきるのは難しい。
だとすると、失敗しても後悔しない、身の丈にあった投資にとどめることがやはり肝要だ。不動産投資で引き受けるリスクは、自身の貯蓄がいくらか目減りして、泣いてやり過ごせる範囲まで。最悪のケースに見舞われ、投資が失敗したとしても、路頭に迷うことがない程度に収めるべきだ。
自分の力では返しきれないほど多額の借金を組むようなことはしてはいけない。
破産のリスクは投資直後にやってくるわけではない。
5年後、10年後、あるいはもっと先に襲ってくる可能性の方が大きい。
迷ったらいつでも引き返す、という余裕を備えておくことも大事だ。
後悔することがないように、不安や疑問が払拭できているかに目をこらし完璧に解消するまでとことん突き詰める。曖昧な説明に妥協するのは禁物。
遠慮もいらない。業者に流されてハンコをつくようなことは絶対に避け、自分自身が「これならいける」と十分に納得できたときにだけ踏み出すようにすればいい。
「節税効果」や「保険代わり」といったセールストークも、部分的には間違っていないとしても、所詮は枝葉の数字に過ぎない。
本業でしっかり稼げなければ、小さな儲けが他に出た所で、たいした慰めにはならない。枝葉の数字や情報に目を奪われ、投資の全体像や枢軸を見失えば本末転倒となる。
不動産投資の枢要は、投じる資金に対し、物件がそこそこの利回りを中長期に渡って得られるかどうかにかかっている。そこで求められるのは、現実的な家賃を想定し空室になりにくい物件を余計なコストはなるべくかけず、妥当な値段で買い入れられるかどうかに尽きる。
家賃保証が無くても、空室にはなりにくく収益性が見込める物件であることを自分の目と足で見極めることが、不動産投資を始める最低限の条件だ。
そもそも業者がなぜ、空室時の家賃を保証しようとするのかを考えてみるといい。親切心、のはずがない。保証が無ければ売れないような代物だからだ。
不動産価格は上がっていくのか、または下がっていくんか。
それを予測するのも困難だ。
不動産価格が値上がりすることを前提とした投資計画をあてにしてはいけない。
投資は結局、「タイミング」が重要だと実感した。
本やネットで紹介される不動産投資の成功例や失敗例を読む時にも、物件の購入時期と文章が書かれた時期に注目すると良い。購入時期が市況の悪い時なら好条件の物件をつかめる確率は上がり、市況の良い時に書いた文章なら物件の「値上がり益」を自慢しやすいが、好機を逃した者が後追いするのは難しい。
私(藤田知也氏)も、実は2009年当時、自宅近くで売りに出た投資物件を思い切って(血迷って)買ってしまった。築20年強で十数平米の小さなワンルーム。
価格は800万円強で、家賃は7万円半ば。
入居者を引き継ぐオーナーチェンジ物件だ。
(中略)
ありがたいことに、その後は同じ住人が暮らし続け、家賃も欠かさず払って頂いている。
表面的な利回りは10%超。給油機の交換などで多少の出費はあったが、管理費や修繕費、税金などを差し引いて、10年間で投資額の半分超は戻ってきた計算となる。
市場が冷え切って誰も買わないような時が不動産投資の好機であり、裏を返せば、みんなが舞い踊って買いに走るようなブームの時は手を出さない方がいい
「この業界は腐りきっている」
同じ台詞が業者の口をついて出るのを何度も聞いた。
不正に走る業者が得をし、真面目な業者がバカを見る状況に、諦念さえ渦巻いている。
これから不動産投資をやろうとする人がいるとすれば、「野放し」になっている悪質業者の魔の手にさらされることになる。
ウソで塗り固めた勧誘にだまされたとしても、損をした投資家は守られず、
不当な利潤を得た業者は軽く逃げ切れる。
素人が安易に手を出してはいけないし、まして業者の言いなりになり、巨額の借金を背負い込むなど言語道断だ。
P社のターゲットは、医師と一流企業のエリート社員。
客に共通するのは、言葉巧みに誘われて信用させられた後、業者に任せっきりになることだ。業者に示された数字を鵜呑みにし、コストをよく調べることもなく
現地まで物件を見に行くこともしない。業者の言いなりだったのだ。
不動産投資ブームのさなか、以前なら見向きもされなかった低価値の物件までもがよく売れた。バブルに踊らされ、魅力の乏しい物件を高値でつかんだ投資家は
ブームが過ぎ去った後で自身の不明を思い知るだろう。
レオパレスほど大手の上場企業であっても、いい加減な工事がまかり通り、報道で暴かれるまで20年もの間、不正を隠し通すことができてしまうのだ。
監視の目が行き届かない中小零細業者であれば、そこで造られた物件にどんな爆弾が潜んでいるとしても不思議は無い。いつ爆発するかもわからず、
責任を持って対応してもらえる当てもない。そんなリスクまで個人で背負っているのが1棟物件のオーナーたちだ。
確定申告は無料でやってあげるなどと、不動産業者がしつこく勧めてくる場合は何か意図があると用心した方が良い。
多いのは、銀行から多額の融資を引き出す際に改ざんした年収や物件価格とつじつまを合わせるケースだ。
これまで見てきた通り、借金は増やせば増やすほど多額の手数料を請求され毎年の利息負担も大きくなる。年間に何百万円、数年で1000万円も払わされる
コストをかけるのは、高い収入がよほど確実に見込める物件でも無い限り利益に見合わない過大なリスクを背負わされることにつながる。
断れない客を狙う
「最初っから『断れない客』を狙うんすよ。独身で、気が弱そうで、東証一部の会社の工場とかで働いていて、コミュニケーション能力が低そうな奴なんかいたらサイコーっすよ」
ワンルーム投資経験者の名簿から、条件に合いそうな人を狙い撃ちにしていく。
そうした相手と会う約束まで取り付けられれば、勝負はほぼ決したようなものだ。
「会って1時間くらい、マンション投資の説明をするじゃないですか。その後意見を聞いて優柔不断なそぶりを見せたら、『はあ!興味があるとか言うから
こっちはわざわざ時間をかけて説明してんすよ。子供じゃないんだから、自分の考えは自分できちんと整理してくださいよ!』とか言いながら机をばんばんと叩く。そしたらね、気の弱い奴はだいたいハンコをついちゃいますよ。
あっ、これは一般論ですよ。ぼくの話じゃなくて」
よくある手口なのだろう。
三為契約が業者にとって好都合なのは、おおもとの所有者から物件を買い取る値段
(=仕入れ値)が、カモとなる最終的な買い手には知られずに済むことだ。
すでに不動産投資をやっている客は、警戒心が薄く、物件を細かく吟味せず判断がおざなりになりやすい為、効率よく契約を取れる。
「家賃保証」とは要するに、客が払った大金の一部を少し返してあげるだけのこと。
そんな不動産業者のまやかしに、あまりに多くの人が翻弄された。
Posted by ブクログ
不動産投資で失敗してしまった人々の事例を詳細に描き、やってはいけないと警告をだしつつ、最後にはそれでもやってみたい人のためにアドバイスが書かれている。
まずは、業者の「家賃保証」「空室保証」は信じてはいけない。「家賃保証」とはに、客が払った大金の一部を少し返してあげるだけのこと。初めての投資なら入念にチェックするが、2回目、3回目となると警戒心が薄れて業者のいいなりになりやすい。「節税対策」も注意すべき。結局損になることも多い。
次に、業者の「利回り」も信じてはいけない。利回り計算の元となる収入も、自分自身で見極めること。家賃相場、入居者がいそうかどうか。自分が背負うリスクはどれだけあるのか。何百万というお金を払うのだから、何度も物件に足を運び、徹底的に分析するのは当然。努力や手間を惜しめば、失敗の確率が高くなる。
最後は、業者のいうことを鵜呑みにしないこと。業者の一番の目的は、物件を売り、客が払う代金から少しでも多くの利益をかすめ取ること。不動産投資は、投じる資金に対し、物件がそこそこの利回りを中長期にわたって得られるかどうかにかかっている。そこで求められるのは、現実的な家賃を想定し、空室になりにくい物件を、余計なコストはなるべくかけず、妥当な値段で買い入れられるかどうか。迷ったらいつでも引き返せるように余裕を持とう。後悔することがないように、不安や疑問は完全に解消しよう。曖昧な説明に妥協するのは禁物。業者のいいなりになってハンコを押すのではなく、自分自身が「これならいける」と納得したときだけ踏みだそう。
失敗しても後悔しない、身の丈に合った投資が肝要。不動産投資でかける金額は、失敗して自分の資産が目減りしても泣いてやり過ごせる範囲まで。身を滅ぼすことを避けるために、この一線をこえてはならないという言葉が心に残った。
Posted by ブクログ
時期が大事、は本当にそう思う。これから人が減る中でも借り手のつく物件はあるだろう。それを見抜いて妥当な金額で入手できるかどうか。あとの183ページからの結論4つはあまりにも常識的なんだが、でもそれがわからなくなるのが投資なんだろうなあ。