あらすじ
戦後の混乱期。長崎で生まれた雅彦は、三歳の時に両親からヴァイオリンを与えられ、将来を嘱望され幼くして上京する。成長する中で雅彦は、大切な家族、友人、仕事仲間たちとの幸福な出会いと凄絶な別れをくり返してきた。ささやかだけど美しい人生を懸命に生き抜いた、もう帰らない人々への思いを愛惜込めて綴る、涙溢れる自伝的長篇小説。
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Posted by ブクログ
電車の中で読んで泣き、続きを寝る前に読んでも泣き、こんなにどっと感動した本は何年振りか。
貧乏・戦争・大切な人との死別、
「お涙ちょうだい」的な要素は多いが、時代背景のせいか、そんな安いものでない。
雅人が待ち続けたエンとの再会
愛犬パールの死
喜代子がおろしたかもしれない赤ちゃんの死
ばあちゃんの死
たくましく咲くバラの花
野川と洋治との出会い、別れ
バンド仲間樫山の死
徳恵ちゃんの死、春人の死
バイオリニスト涼子の死
節子おばちゃんの死
登美子おばちゃんと忠おじの死
一番心に残ったのは、雅彦の子ども時代。
おばあちゃんのおにぎりや、繁と遊んだことや、貧乏で給食費も払えなかったこと。貧乏だけど、家族仲良く幸せに暮らしていた様子が、なぜだかいいなあと思った。
戦後すぐの時代だから、今なら助かるであろう命もあった。
被爆してずっと病気がちだった登美子おばちゃんも。
ナガサキの原爆投下のシーンは悲しかった。
ちょっと遠くへ行こうが海外へ行こうが、現代であればいつでも電話で声を聞けるしメールで近況報告もできる。でもこの時代はそうはいかない。遠くへ行くとなると本当に一生の別れのような感じだし、雅彦が上京したときに送りに来てくれた友達とのエピソードがそれを物語っている。
精霊流しって、あんまり知らなかった。
でも死者の魂を船に乗せて流してあげるって、すごく素敵な風習だなと思う。
☆唯一この本で面白かったのが、
第5話「精霊流し」で出てくる林幸之助の遺言書
「一、江山楼宴会費用(格安にて)
二、長崎東検番 花代(格安にて)
三、税務署贈与税領収書(格安にて、笑)」
ここだけ、やたら笑えた。
恥ずかしながら精霊流しの曲も聞いたことがなく、この本が本当に自伝的小説だということも読み終えて調べて初めて知った。
でも読み終えてからでよかった・・先入観持たずに読めたから、こんだけ感動できたのかも。
雅彦=さだまさしさん、ですね。
精霊流しは、いとこの春人を思って書いた歌だそうで。
出てくる長崎弁、なつかしかった。
学生時代なぜか九州(特に長崎)出身の子が周りに多く、あったかい感じのするその方言に結構なじんだものだった。
思い出の作品になりそうです。
Posted by ブクログ
さだまさしの自伝的小説。
さださんの小説は、
”夏解”
でこの人、音楽以外にも文才もあるんだ!と感動したが
この作品も面白かった。
特に、飲み屋のバイトのくだりは最高!