あらすじ
NYで活躍する記者のジャネットはある晩、道ばたでゴミをあさる母を見かける。衝撃の再会を機によみがえる家族との日々。夜逃げつづきの極貧生活のなか、夢ばかり追う父母への怒りと愛の狭間で苦悩しつつ、少女は人生を切り拓いていく。全米350万部突破、同名映画の原作となった感動の実話。解説/梯久美子
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Posted by ブクログ
訳者あとがき
「真実はつくられた物語よりも深い感動をもたらしうる。」
「心の奥底に封印してきた過去に向きあうのは、ひどく苦しい作業だ。それが誰にも知られたくない重荷であり、他人の目には悲惨に映る体験であればなおさらのこと。けれど、艱難辛苦を乗り越えて、幸せにたどりついた人間が綴る真実の物語は、読み手の心を強く揺さぶり、深い余韻を残してくれる。」
まさに。
だから私はノンフィクションが好きなんだ、と改めて実感した。
そして最後の解説は、恵まれて生きてきた人がなんとか想像力を働かせて書いたものであることがよくわかり、憤りを感じるものだ。
「だが本書を読む人はみな、どんなにひどい男であり女であっても、子どもにとっては親は親であり、愛し愛されたい対象であることを、痛みとともに思い知るだろう。」この一文なんかは特に、親ガチャに成功した(少なくとも失敗しなかった)脳内お花畑人間がそれらしく書いたものでしかないと感じる。現実の悲惨な親子関係はそんなに美しいものではない!
ただこの駄文にも1箇所、鋭い気づきが書いてある。「幼少期の記憶が非常に鮮明な人が私の知人にもいる。そのうちの何人かに共通するのは、すべてをよく見、注意深く聞いて覚えておかないと生き延びることのできなかった子ども時代を送ったということだ。世話を焼いてくれる大人がいなかった、ネグレクトからのサバイバーである。」
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なけなしのお金を浪費し、計画性もなく、あちこちを転々とし、子供の生活を犠牲にするどうしようもないダメ親っぷり
そして、まだ子供であるがゆえに、そんな「親」のそばで劣等感に苛まれながら日々を凌ぐことしかできない幼少期
いくら努力してもダメ親に足を引っ張られる子供
今風に言うところの "親ガチャ" に大失敗した子供
そして思春期になると、一刻も早く親元から離れて重荷から解放されること(少なくとも共倒れから逃れること)を目指して実行していく…
程度の差はあれ、過去の自分とそっくりで
読みながらイロイロ思い出されて辛かった。
P288でジャネットがハイスクールにあがったところから一気に心が大人になり、自立していく。
訳者あとがきの言葉を借りれば、やがてジャネットは、自分たちきょうだいが両親のせいで苦しい生活を強いられているという現実を認識し、なんとかしてそこから脱出しようと決心する。
「この女が自分の母親だなんて思いたくもなかった」
「母のようにだけはなるまい」
「…そう心に誓い、教科書を手に家を出た」
「私はどうしていいかわからなかった。親にできるかぎりのことをしてやりたいという気持ちもあれば、もう縁を切りたいという気持ちもあった」
まるで自分が書いたみたいで共感しかない。重荷でしかない親によってさんざん苦しめられてきた自分の過去、生き延びるために親を見捨てる罪悪感と闘った日々のつらさがよみがえり、涙なくしては読めなくなった。
そんな親でも見捨てない主人公の気持ちは私には理解できないけれど、読み物としてとても良い。
★5つではぜんぜん足りない。
ただし、恵まれた環境で生きてきた人が読んでも
真の理解はできないだろう、まるでフィクションのように他人事として理解したつもりにはなれても。
たとえば「食卓に食べ物を載せることなんて、すごく簡単なんだ、本気でそうしようと思えば」
この言葉に込められた想いを、どれだけの読者が本当に理解できるだろうか。。
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こちらは2019年5月発売のハヤカワ・ノンフィクション文庫版。
河出書房新社の『ガラスの城の子どもたち』(2007年1月発売)と同じ原作なのでご注意。