【感想・ネタバレ】戦後最大の偽書事件 「東日流外三郡誌」のレビュー

あらすじ

青森県五所川原市にある一軒の農家の屋根裏から、膨大な数の古文書が発見された。当初は新たな古代文明の存在に熱狂する地元。ところが1992年の訴訟をきっかけに、その真偽を問う一大論争が巻き起こった。この「東日流外三郡誌」を巡る戦後最大の偽書事件を、東奥日報の一人の青年記者が綿密な取材を重ね、偽書である証拠を突き付けていく──。事件後見えてきた新たな考察を加えた迫真のルポ。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後日本における偽書事件の代表例「東日流外三郡誌」をめぐる実態を克明に追ったノンフィクションです。

この古文書は、青森県五所川原市の炭焼き農家・和田喜八郎氏の屋根裏から発見されたとされ、古代津軽に大和王権から迫害された民が繁栄していたという壮大な歴史を描いていました。しかし、その内容は滑稽なまでに矛盾と不自然さに満ちていました。

地元紙記者の著者は、和田氏に関する盗作訴訟の取材をきっかけに、この偽書をめぐる奇怪な人間模様に巻き込まれていきます。調査を進める中で明らかになったのは、偽書の中に戦後の言葉や福沢諭吉の名文句まで登場するという杜撰さです。筆跡鑑定や用紙の分析からも、古文書の正体は和田氏自身の手によるものであることが裏付けられました。

それにもかかわらず、この偽書は1980年代の古代史ブームに乗って広まり、自治体が根拠のない資料を買い取り、施設を建設するなど地域振興の名の下に公的資金(税金)まで投入される事態となりました。

学界の多くが「相手にしない」という態度を取った結果、偽史は大衆文化の中で繁殖し、社会に深刻な影響を及ぼしたのです。
戦ったのは著者のような地元の記者のような弱小連中でした。

ここで重要なのは、偽史の拡散を「放置することの危険性」です。

映画『否定と肯定』が示すように、歴史改ざんは沈黙によって事実化してしまいます。歴史だけでなく科学も近年の研究では、科学否定論者に反論しないことが最悪の選択肢であるとされています(『エビデンスを嫌う人たち』参照)。
「1+1=3」と言う子どもに「そういう見方もあるね」「あなたはそう思いたいのね」と寄り添うのではなく、「1+1=2だ」と正しく教えることが社会の健全性を守るために不可欠なのです。

社会構成主義を曲解すると、こういう人にはこういう人の真実があるから「寄り添う」とか「傾聴」とか言ってしまい社会悪に手を貸すことになるわけなのです。

和田氏の偽書製作は、自己承認欲求と古物商法というビジネスモデルの結合によって成立しました。しかし、古田武彦氏ら一部の知識人が擁護したことで、問題は地域のインチキ商法にとどまらず、広範な社会現象へと拡大しました。結果、市民運動の退潮や学問への不信感を招いたことは、戦後日本の知的風土の脆弱さを示すエピソードといえるのでしょうね。

和田文書は、21世紀に至るまで著名な研究者を含む、多くの人々を騙しおおせていた椿井政隆(1770年~1837年)の椿井文書には及ばなかったが、まだまだ偽書は各地にありますし、ネットでは儲けたい人や承認欲求の塊みたいな連中が出鱈目をアップし続けています。

そもそも日本人の95%は百姓でした。姓名を持ってよいとなった時に、自分の好きな姓名にして偽の家系図を作って「ウチは源氏」「ウチは平家」「ウチは藤原」とかやっているわけです。
この本は偽史がいかに社会に浸透し、自治体や市民運動を巻き込むか、その構造をじっくりと描き出しています。

偽史が短絡的な思考と利益追求の欲望に支えられ、スピードとパワーをもって広がる現象は、現代のネット社会にも通じるものです。歴史をめぐる「真実」と「虚構」の攻防は、過去の問題ではなく、今、ポスト真実の時代だからこそ課題かと思えます。

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2026年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新章以外は10年前に読んでいたから読みやすい
ほゞ再読ではあるが、改めて和田喜八郎の偽書
でメシを食ってきた事が丹念に書かれている
21才の時から仏像など古物を見つけては、関係
する古文書を見せて展示やら埋蔵物を掘る資金
集めやらの詐欺師であり、本書には古文書商法
として自治体を絡めた事件を実例でだしている
椿井文書が巻き起こした歴史の増殖のように、
自治体の村史に残る事で、強烈な事実感が湧く
市浦村史・田沢湖町など税金が和田喜八郎の元
へ流れた事も腹立たしい
この詐欺師を応援する歴史ゴロ「古田武彦」が
事態をややこしく大事にした
二人ともバレバレの嘘をもったいぶって長く引
きのばす事で自著の売り上げを伸ばした確信犯

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2024年01月06日

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