【感想・ネタバレ】ひとの気持ちが聴こえたら 私のアスペルガー治療記のレビュー

あらすじ

他者の感情が読めないアスペルガーの私は、早期経頭蓋磁気刺激という実験的施療の影響で、感情が見える世界へと放り込まれた。待っていたのは希望と戸惑い、そして「アルジャーノン」のようになるのかという不安……患者が自ら語る稀有なアスベルガー施療体験。

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聴こえることの長所短所

私は自閉症スペクトラム障害(ASD)があるので、ASDでない人が見ている世界と自分の世界にどれくらいの違いがあるのか知りたくて読みました。

人の気持ちが分からなくても、分かるふりをして生活することはできます。ですが、著者の体験を読むと、共感能力があることがいかにカラフルな世界なのか分かりました。もちろん共感能力があるが故に辛いこともあるようです。

「幻覚と現実」の章にTMSの女性被験者の体験が記載されています。アスペルガーの人が社交不安を抱えている理由を「よその国にいて、現地の言葉もろくに話せない状況に置かれているようなものです」と書いていて目から鱗が落ちました。今後、ASDのことを誰かに説明するのに役立ちそうです。

人の気持ちが聴こえるようになることには、メリットもデメリットもあるというのが著者の主張だと思います。
TMSを私も受けてみたいですが、しばらくは「しゃべる犬」として頑張りたいです。

1
2020年04月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ようやく再開した読書習慣
長いこと、いろんな本を読んできたけど

好きな作家を追い続けたり
好きなジャンルに偏ってたり

それはそれで面白いんだけど

Bar営業を始めてから
読書好きな常連さんから
いろんなジャンルの書籍を紹介してもらって

結構、幅が広がったなぁーと思いきや…


最近は、お気に入りのYouTubeチャンネルで
おすすめしていた書籍を読んでみるという試み


特に、影響を受けてるのは
最近ドはまりしてる
YouTubeチャンネルの
『岡田斗司夫ゼミ』

オタキングと自称しているだけあって
サブカル系の書籍はもちろん

ビジネス書や、歴史、医療など
とにかく幅広く解説してくれる


その中でも、興味を引いたのが本書


洋書翻訳本が苦手な私ですが
本書の翻訳は、非常に読みやすい
ありがたいねー



で、どのような内容かというと…


著者である
ジョン・エルダー・ロビンソン氏の自伝


ロビンソン氏は
子供の頃から、周囲の人々と
うまくコミュニケーションが取れず
仲間外れにされがち

しかし、機械モノが大好きで
電気で動くモノは
とにかくバラして組み立てる
仕組みを理解してご満悦という

一風変わった幼少期を過ごす

絶対音感の落ち主だったため
中学生の頃から通っていた
近所のライブBarで、機材のセッティングを手伝うようになり
次第に、頭角を現す


全米ツアー中の
超有名アーティストのツアーに参加
(ピンク・フロイドの音響エンジニアやキッスの火を噴くギターの設計をする)

仕事に対しての信頼と、大金を得るも
人間関係がうまくいかない


音響エンジニアを辞めて
自動車修理工場を立ち上げ、すぐに軌道にのせるも
お客とのトラブルが絶えない


そんな中、同じく自閉症スペクトラムの弟が
作家になり成功を収めたのを機に
自身も作家デビューする

書籍出版に伴い、講演活動が増し
講演を聴きにきていた研究者に声をかけられ
「経頭蓋磁気刺激調査研究(TMS)」
に参加する事となる


TMSというのは
頭部にTMSコイルをあてて
磁場を発生させ
脳内に電磁エネルギーを注ぎ
神経回路の機能を高める医療技術のコト


重来の痙攣法(電気ショック)に比べ
はるかに少ないエネルギーで
ターゲットを絞って
ピンポイントで狙えるという
極めて安全性が高く、副作用の少ない技術で

現在では、アメリカを始め
ヨーロッパや日本でも
脳卒中や、うつ病の治療に使われてるようです



年齢も性別もバラバラな被験者達は
全員、自閉症スペクトラム
ロビンソンも、息子であるカービーと参加

事前のIQテストでは
参加者の平均が120

恐ろしい集団である笑


自閉症スペクトラムの特徴として
他者の口調や、仕草などの
非言語シグナルを理解できず
額面通り、発せられた言語だけでしか解釈できない


コレが、どーゆーコトかと言うと

嫌味や、皮肉が理解できず
表情から、相手の気持ちが汲み取れない
所謂、空気が読めない状態


ロビンソンの場合
音に関する感性は、突出していたため
音楽を聴いても
頭の中で、正確な波形が浮かび
微妙な音のズレや、雑音が気になる状態から

最初のTMS実験を受けた直後
何百回と聴いたCDで

音のニュアンスや、歌詞に込められた意味を
瞬時に感じ取り
溢れ出る涙を止められなかったという

他にも
色彩が、以前よりも鮮明に見えたり
人の表情を、読み取れるようになったという


本書でも
「世の中が以前とは違っているように見えるというのは一大事だ
人生における、すべてのバランスが変わってしまうのだから」
と、綴っている



TMS研究の第一期が終了後
一番恐れていたことが起こった


「TMSの影響は、徐々に薄れて消えてしまった
他人の感情に気がつかないまま、人生を送っていたのに
束の間でも、新たな感覚を味わったせいで
人を見抜く感覚が失せてしまったことに
大きな失望感を覚えた」


幼い頃に、夢中で読んだ
「アルジャーノンに花束を」の主人公
チャリーと
同じになってしまうのではないかと…

その恐怖心を沈めるために
専門書や論文を読み漁り
TMS研究者であるアルバロ博士や
その他のstaff達と
度重なる協議を重ねる


その後も、引続きTMS研究に参加し続け
最初の感覚では無いにせよ
徐々に、開かれた感性が定着していった

その代わりに失われた物も多かったという


極度の鬱病だった、2番目の妻とは
お互いの感性が逆ベクトルだったことで
バランスを保っていたが

ロビンソン氏の感性が開花したことによって
妻のマイナスな感情に耐えられなくなり、離婚したり

子供の頃から、唯一の友達だと思ってた人物が
実は、いつも自分を蔑んでいたことに気づく

「私は彼を許すことができるだろうか?
もちろんできる
だが、友情を再開させる理由は何ひとつなかった」


この台詞が、個人的には一番響いた
人間関係の本質が、凝縮されている


特殊な能力を、早い段階から生かし
大金を得ても、どうしても得難いもの

TMSという研究に参加して
普通の感性を得ても尚
失うものの多さ

同じ障害を抱えて、生きづらい人々を励まし
TMSという、最新の研究に携わりながら
自分の新しい生き方を見つけたロビンソン氏


特殊な人生過ぎて
なかなか共感というわけにはいかないが
とても考えさせられるコトが多かったな

0
2020年08月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「アルジャーノンに花束を」で行われたことと
似たような実験が現在では行われており、
経頭蓋磁気刺激(TMS)治療により、
自閉症と診断された著者が大学で行われている
実験に参加し、自分自身に起こった変化が
詳細に綴られている。

「電磁石を介してパルスを送って、人の脳に
ごく少量のエネルギーを注ぐ」(P28)によって
「脳内の神経ネットワークに電磁エネルギーを
くわえると、ネットワークが新たな回路を作り、
強化したい回路を強固にします。」(P29)という。

治療を受けて著者は人の心が理解できるように
なったりするが、それは今までうまく行っていた
人間関係が悪くなったり、世の中の悪いニュースを
知って不快な思いをするという、マイナス面も
出てきたりする。

この治療法は自閉症に対してはいまだ研究中である。
永続的な変化があった人がいるかどうかを著者が
研究者に尋ねたところ、「TMSの影響と脳本来の
可塑的変化のプロセスを、それ以上区別できなく
なってしまいます。」(P252)という回答だった。

0
2019年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回はしっかりと感想を書いてみたいと思います。
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この本は『アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)』である筆者が、
『TMS』という治療実験を受けた時の経験を軸に、
自閉症の人の思考や行動、脳科学、自身の家族など色んな内容が書かれている本です。
難しい部分もあるけど、とても興味深くサクサク読めたり、グッと考えさせられる部分もあります。
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では、そんなてんこ盛りの内容のこの本で、僕が一番面白かった内容に触れます。
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脳には【視覚野】という部分があります。
この部分は、簡単に言うと、
『視覚(目で見た)情報を使って、周りの状況(距離や方向)を把握する部分』
つまり、道に落ちている障害物を避けて歩く時に使っている部分って事です。
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ここでひとつの疑問が浮かびます。
「目が見えない(視覚情報がない)人の【視覚野】は使っていないのでしょうか?」
上の説明からすると『使っていない』ような印象を受けますよね?
ところがどっこい、
「目が見えない人も【視覚野】をしっかりと使っています。」
そもそも【視覚野】という名前は『目が見える人が多い』からこの名前が付いてるだけであって、先に書いたように、この脳の部分の本質は『周りの状況把握』をすることです。
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例えば、目が見えない人には『音(聴覚)』で物との距離が分かるようになり、歩いたり走ったり出来るようになる人もいます。
(ここが僕がとても面白いと思ったトコですが、)
この【視覚野】という部分を使い『音が聞こえる』のではなく『音が見える』ようになるのです。
目が見える人:見る→視覚野→避ける
目が見えない人:聴く→視覚野→避ける
ってこと。
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凄くないですか?人間の脳って!!
入力(視覚や聴覚)が変わっても、同じ行動(避ける)が出来るのです。
車のエンジンに例えるなら、
ガソリンだろうが、軽油だろうが、灯油だろうがどれでも大丈夫ってこと。
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この事実を知った時、面白くてたまりませんでした!!
難しい単語が多かったので少し読み難くはありましたが、自閉症などに対する理解を深める上でも、一度は読んでおいて良い本だと思います。

0
2019年07月01日

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