あらすじ
現金が消えると、どのような社会になるのか!?
「キャッシュレス国家」中国の実態を、北京在住の日本人経済学者が徹底分析!
いま日本では国をあげてキャッシュレス化を推進しているが、そのはるか先を行くのが中国だ。スマホの決済アプリが広くいきわたり、いまや電子マネーで払えない場所はほとんどない。
こうした経済システムは中国で「新経済」と呼ばれている。本書では、いま中国で続々と誕生している新ビジネスを紹介。カーシェアリングやシェア自転車といった有名なものにはじまり、料理や食材のデリバリー、無人カラオケ、小型フィットネスジム、さらには病院の受付、支払いまでスマホひとつで済んでしまう中国の今が分かる。
では、なぜ中国で「新経済」が発展してたのか。その背景にはイノベーションによる経済成長を目指す中国政府の後押しがあったことを、データを駆使して示す。
そして今、「新経済」はビジネスの枠を超えて、中国政府の社会統治(ガバナンス)に活用されようとしている。キャッシュレス経済とは個人情報を利便性と交換するシステムだ。だからプラットフォームには必然的に個人情報が集まる。個人の信用情報を用いた壮大な社会実験に取り組む中国の現状を考察する。
最後に指摘するのが新経済の「影」だ。中国では新しいビジネスが数多く誕生しているが、成功ばかりでなく、失敗するケースも少なくない。そうした現実を指摘した上で、日本が「中国新経済」と、どのような協力関係を結べるのかを考察する。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
タイトルのキャッシュレスは、本書での骨格になってはいるが全体は現在の沸騰する中国社会・経済の実態が生き生きと描かれている。
最近は、中国という国に対してのネガティブな面が多く報道されているため(新疆ウイグル自治区でのムスリムに対する非人道的な迫害など)中国の変化成長の激しさやネット利用の高度なことなどが忘れられがちになっている。
この本を読むことで中国の経済、人々の生活の変化のスピードを感じ取ることができる。巨大な国家国土面積で25倍、人口14億人、最近の大学卒業者数800万人弱、民族数56というエネルギーの凄さ。
Posted by ブクログ
中国の今が垣間見れました!
客観的データだけでなく、筆者の体験談も多く書かれており、とても読みやすかったです。
これを読んで自分の目でも中国が見てみたくなったので、この夏は中国に行ってみようと思います。
Posted by ブクログ
中国のテクノロジーの消費生活への普及状況を記述。不便なことを技術で改善し続ける様子は既得権益と規制に阻まれている日本とはかなり異なる発展具合。基本的にはスマホのアプリで決済、予約がすべてできるようになっている。
Posted by ブクログ
中国では「アリペイ」か「ウィーチャットペイ」
を持っていないと生活できないと言われていま
す。
そのくらいキャッシュレスのんスマホ決済が
進んでいるのです。屋台で饅頭を買うのでも
スマホ決済が可能ですからね。
そういう社会はそれまで現金では手間がかかっ
ていた「不便」をリカバリーしようと、起業家
がイノベーションを起こして生まれた結果と
考えられています。
この部分では中国は日本のはるか先を行って
いると断言できます。
逆を言えば、日本の来たるキャッシュレス社会
に先んじて壮大な実験をしているともとれます。
つまりキャッシュレス社会にも負の部分は当然
あります。
そんな中国のキャッスレス社会から我々は何を
学ぶことができるのか。大いに考えさせられ
る一冊です。
いずれにしろ現金には膨大なコストがかかって
います。
製造された現金が我々の手元に届くまでに、
輸送や警備、保管など多くの「手間」がかか
っていることは想像に難くないと思います。
キャッシュレス社会は必然なのです。
Posted by ブクログ
中国でいかにキャッシュレスが進んでいるか、リアルな現場の話も織り交ぜた説明でわかりやすい。
良し悪しは別として、とにかく中国ははるかに日本より進んでいる。
Posted by ブクログ
前書きで「支付宝」や「微信支付」などの決済手段について触れてくれているので、昨今の中国人観光客の増加に伴ってよく見かけるようになった謎の表示の正体がわかり、以降一気に読みやすくなった。
これらの決済手段の普及=現金の信用性のなさ、と安易に結びつけていたが、読みすすめると、それが間違いだとわかった。自分の中で中国に対するイメージが90年代で止まっていることを痛感した。
政府が結果的に握ってしまっている個人情報の活用方法や、若者の高学歴化が労働力にもたらす変化など、まだまだ注目すべき点は多いと感じた。
Posted by ブクログ
キャッシュレスで時代の先を行く中国。アリババやテンセントの二大プラットフォーマーが牽引する。レストランやジム、カラオケなどでひとの省エネ化をもたらし、支払いをスマホひとつで済ませることができる。中国で病院にかかる場合の煩わしさには驚きでしたが。
一方でレイティングにより個人の格付けが進む。
政府による国民情報の一括管理の怖さ。共産主義とマネー経済の実体との解離への矛盾。これを考えると中国がどこに向かおうとしているのかも気になりました。
それでも中国の変化の速さと国民の逞しさに改めて中国の凄さを実感。
Posted by ブクログ
中国での「QR決済ビジネス」などがどのように進められてきたかがよくわかる本である。「燎原の火花も荒野を焼き尽くす」との毛沢東の有名な言葉を思い起こした。まさに勃興するビジネス、「蛙跳び(リープフロッグ)」の実例である。
宅配ビジネスの膨張も凄い。小生は昨年観光で訪中した時に北京市内を爆走する電動バイクの大群に驚いたが、本書によると免許も登録も要らないものだという。政治は統制するが経済は自由化というキメラの「国家資本主義」に驚いた。
ただ本書は「光と陰」とはいうが前半の印象の方が圧倒的に強い。「陰」をよく考えるとうそ寒い思いを抱く。個人情報の保護やデータの国家統制の怖さについてもう少し突っ込んだ内容も知りたいと思った。
Posted by ブクログ
アリババ、テンセントのサービスを中心に、中国におけるキャッシュレスサービスの状況を紹介。現地に住んでいる著者ならではの、生活者目線でのレポートがとても参考になる。
ちょっと前まで、ぼったくりや、おもてなしとは程遠いサービスが一般的だった中国において、逆にそれを社会問題として、こういうサービスが出てきて、一気に普及したことは興味深い。政府主導が容易という環境はあるが、問題があるところにニーズがあるということでもある。日本においても、少子高齢化、働き手不足といった問題は、ビジネスチャンスになりうるのではないかと考えてしまった。