あらすじ
『極夜行』で第1回 Yahoo!×本屋大賞 ノンフィクション本大賞&大佛次郎賞のW受賞!
いまもっとも注目される熱い探検家の素顔は…
「じつは私、こんなにイケナイ人間なのです」
「先日、不惑をむかえた。四十歳。いわれてみれば、たしかに今回は惑わなかったなという気がする。惑えなかったということは、私の人生から惑いの原因となる何かが失われてしまったということでもある。この十年間で私の皮膚の内側から何が剥げてしまったのか――。」
探検とは日常を飛びだし、非日常の世界で未知をさぐる行為である。しかし、探検家といえども、四六時中、非日常の領域にいるわけではない。不惑をむかえた探検家が、セイウチに殺されかけたりしつつも、妻とケンカしたり、娘を叱ったりする日常についても綴った珠玉のエッセイ集。
宮坂学ヤフー会長との、冒険とビジネスと「脱システム」をめぐる対談も収録!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
彼のエッセーはこれを含めて今のところ2冊読んだけど、期待を裏切らない内容に感心する。具体的な内容は日が経ってしまったので書けないけど面白かった。
Posted by ブクログ
「極夜行」で一流のノンフィクション作家、
探検家に仲間入りした角幡氏の日常を綴った
エッセイ集です。
当たり前ですが、探検に出る時以外は普通の
家庭人なのです。奥さんには頭が上がらない
し、娘は可愛いくてしょうがない。
そんな日常の生活と探検家とのギャップが
楽しめる一冊です。
また、なぜ極夜の北極をGPSも持たずに
挑戦したかの理由など、「極夜行」への
きっかけが語られている点も読みどころです。
Posted by ブクログ
著者が7ヶ月間の北極圏の滞在を終えて帰国した際、妻から「くさいね」と指摘されるも、全身から発散している異様な体臭は、1ヶ月経っても抜けないツワモノ。そのニオイを指して「原始人のニオイ」と妻が表現。とはいえ本人にはその自覚がないから困ったもの。
確かに北極圏では、イヌイットの村人らと同じ食事を摂る。アザラシやセイウチやシロクマの生肉や内臓を焼き、醤油をかけて食べる。海洋動物独特の臭みはあるものの、その臭いにもいつしか慣れ、気がつけば、食べ比べをするほどワシワシと食べている。食えない部位は橇(そり)を牽引する犬たちがガツガツとむしゃぶりつく。また狩を行えば、血や脂が衣服に付着もする。
著者の北極圏での暮らしぶりはイヌイットと変わらぬ凄絶さで、妻の言う原始人のニオイという例えもさもありなん。生きるために獲物を捕え、屠り、喰らう。腹が空けば、袋に入れてドアノブに掛け自然保存した肉をまた食らう。まさに原始人。そら、異様なニオイだって発しまっせ!である。今や日本のマタギでさえしないであろう原始的狩猟生活を自ら好んで嬉々としてやっている。
これを読み「香水とハイヒールは不衛生の産物」の話を思い出した。19世紀のパリ。当時は下水道も未整備。服の洗濯も月一できれば良い方。服のカビなんて当たり前。入浴習慣も乏しい。そのため体臭をごまかすための香水を大量にふりかける。ハイヒールは路上の糞尿をかき分けて歩くための必須アイテム。不衛生と不快感から生まれた生活必需品であったんですな。
本書は、早大探検部時代から直近までの探検余話に、探検家の日常−帰国後の家族との交流−を挟む構成となっている。シロクマらの海洋動物の肉を食べては探検に勤しむ非日常、帰国後は鎌倉で過ごす家族との日常という、この激しい落差。
北極圏での凄まじい探検生活を知らされただけに、陸に上がり休養に努める遠洋漁業の船乗りのような安息の時間に身を置きつつも、はたして著者の「心の本籍地」はどこにあり、むしろ日常は探検期間中にあるのでは…とついつい忖度しまう一冊でありました。