あらすじ
あなたは、本当の自分を他人に見せられますか――。恋愛からホラーまで、松井玲奈が覗く“人間模様”。鮮烈なデビュー短編集。■「ハンドメイド」いつもより荷物の重い日が好きだ。お昼の弁当に加えてもう二つ、夜に彼と食べる用の弁当を作る。食べる場所は決まって“ホテル”で――。■「ジャム」僕のお父さんは一人じゃない。お父さんの後ろには、真っ白な顔のお父さんたちが並んでいる――。悪夢的奇想、ホラー怪作!■「いとうちゃん」メイドになりたい。その一心で上京した十八歳の“いとうちゃん”は、メイド喫茶で働き始めるものの、ストレスから体重が増加してしまう。痩せ方がわからず、周囲にも疎まれ不安を募らせていくが――。■「完熟」何もない退屈な田舎での夏休み。年上の雰囲気を身にまとう女に僕は出会う。彼女は水辺で一心不乱に桃を食べていて……。そんな昔の記憶が、大人になった僕のフェティシズムを刺激する――。■「リアルタイム・インテンション」巷で人気の仲良しYouTuber三人組。本音を吐露してしまうという“本音ダシ鍋”を食す企画の生配信で、事件は起きる。■「拭っても、拭っても」広告代理店に勤めるアラサーのゆりは、半年ほど前まである癖(へき)を持つ男性と付き合っていた。その彼に理不尽にフラれたことが心の傷になっていて――。失恋と再生の物語。
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Posted by ブクログ
松井玲奈さんの処女作。
情事、グロ、デブス、フェティシズム、本音、潔癖、といったテーマが内容の6つの短編集。
私的には「完熟」が好きなやつだった。
ほんのりエロス的な表現がステキでした。
どのお話にも「食」に関する描写があり、食欲をそそられるものがありました。
面白い!!
女優で作家の松井玲奈さんの短編小説集。どのお話もとても面白かった!!『ハンドメイド』は、とても丁寧に気持ちを描いている。そして、場面を切り取る興味深い描写が、お!っとなる。『ジャム』はホラーテイストで新しく読んでいてワクワク感。『完熟』はフェチをここまで追求した作品は読んだことがなく、これまた新鮮さと驚きがあった。『拭っても拭っても』は気持ちの流れがとても気持ちよくて、読後感がとてもスッキリして良い。どれも凄く好きな作品でした!
Posted by ブクログ
初読み作家の本を読んだとき、ページを開いて何行かで「この人の言葉、好きだな」と思うことがある。
今回久々にその感覚を味わった。どんどん彼女の言葉へ、世界へと引き込まれていった。
話のテイストは違うものでも「カモフラージュ」というモチーフがあるので次はどんな雰囲気の話なのかという楽しみもあった。
こんな話も好きですよ、という松井玲奈の名刺のような作品だ。
誰もがみんな人に言えない心の奥がある。隠しているそれを覗き見してしまったような気分になる。
話としてはそれほど目新しいものではないのかもしれない。だが時々心に刺さるフレーズがあり、清廉さと生々しさを感じさせる不思議な感性が魅力。
作詞をしてもいいものが書けるのではないだろうか。
発売された当時本屋にサイン本が並んでいたの、買っておけばよかったなぁ。
ハンドメイド
不倫とか相手がいる人にハマっていくのはこんな感じなのかもしれない。
別れ話をしたときの男の引き止め方が本当にそれっぽっくて卑怯。
関係ないけど、朝作ったお弁当を夜に食べても大丈夫なんだろうか。
ジャム
恋愛話がメインの短編集かと思いきや、2編めにしてホラー。なかなかグロい。
いとうちゃん
相談相手の田中さんの言葉がいろいろと良かった。
理想と現実が違うのならば「理想と手に入れるか、現実を受け入れるか、自分と相談しなくちゃだ」というのは、アイドルだった作者だからこそ実感がこもっているように思える。
完熟
人の性癖を覗き見してしまったような背徳感。
リアルタイム・インテンション
うまくいっているからこそ不都合や不満から目をそらして組んでいたチームも、ほんの少しのきっかけで破綻する。そこで終わらずに再生するのがすごい。成功という欲を優先するのもいいと思う。
拭っても、拭っても
どう見ても地雷男なので別れて良かったと思うけど、洗脳状態でのめりこんでいるとダメージは大きい。
過去の全てが無駄になるわけではないので、未来を上書きしていけばいい。