あらすじ
楽園は戦場と化した。女たち、生き残れ!
南国のリゾートに出掛けたOL3人は、内乱により戦場と化した島で生き残れるのか?
文明の意味を問う、スリルと感動の1300枚
ノンキャリ公務員の真央子、買い物依存症の祝子、不倫の恋に悩むOLありさの三人組は、バカンス先のバヤン・リゾートで、テオマバル国の内乱に巻き込まれる。
ゲリラの手に落ちた島で、虐殺を逃げ延び、彼女たちは生き残れるのか……?
圧倒的なスケールで、異文化接触地点(コンタクト・ゾーン)での女たちの闘いを描いた感動巨編。
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東南アジアからウクライナを想起
架空の国の多民族が割拠する南方の島での物語.作者の篠田節子は昔からすごい!と思っている.何十年か前のことだが東京に住む知人と喫茶店で翌日の打ち合わせというか雑談をしているときに篠田節子はスゴイと盛り上がったことを思いだした.その当時もコンタクト・ゾーンは出版されていたような気がするが,最近ロシアによるウクライナ侵攻がはじまってから電子書籍で上下巻を読み切った.舞台となるのは島の中でも豊かな農作物地域がある古くからの農村である.政府軍と民族解放戦線と称する世界の紛争地帯で養成された兵士たちが幹部となり村でかき集められた雑兵達を使って巻き起す権力闘争の真っ只中で,その古い農村の長老や村長らが老獪な知恵でどこまで村のシステムと村人らを守ることができるかのあたりが大変に興味深い.足首と膝を打ち抜かれた村の長が息子に言う.「いいか,我々の前に,最良の選択などない.できるのはよりましな方を選ぶことだけだ.……」.この多少ともコッチの方がましという感覚は,最良のものなど我々のところにはありはしない.見切りをつけなければならないときの大事な心得でしょうか.この紛争のど真ん中に観光客として入ってしまった日本人OL三人が主人公ではあるが,この小説を読んでいると今の世界の紛争地域の政治地勢的な背景をあれこれと考えさせられた.小説の舞台となる豊かな農作物の環境に恵まれた農村との比較としてか,ウクライナの国名が豊かな世界の穀倉地帯の代表として登場している.あと作品レビューとは違うが,誤植と思われる箇所が電子書籍に二箇所くらいあった.「村の雑貨屋は品薄になっているのて,」と「もかしてスンニ派と」が気になりました.