あらすじ
その男の人生は20世紀の経済学史そのものだった――。〈資本主義の不安定さを数理経済学で証明する〉。今から50年以上も前、優れた論文の数々で世界を驚かせた日本人経済学者がいた。宇沢弘文――その生涯は「人々が平和に暮らせる世界」の追求に捧げられ、行き過ぎた市場原理主義を乗り越えるための「次」を考え続けた理念の人だった。――ノーベル経済学賞にもっとも近かった日本人 86年の激動の生涯――
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Posted by ブクログ
人間を損得勘定のみで動く”ホモ・エコノミクス”と捉えた近代経済学に対して、経済学に人間の心を埋め込もうとした宇沢弘文の生涯。「社会の病を癒したい」という想いで数学を捨てて経済学を志し、その信念を最後まで貫いた生き様には感動した。また、多くの経済学者が出てくるので、様々な経済思想に触れられるのも面白い。
宇沢弘文が日本帰国後に本格的に研究した、”社会的関係資本”については、新自由主義を乗り越えた社会を考える上で重要な概念だと感じた。市場一辺倒でも国家一辺倒でもなく、コモンズが社会的共通資本を担う社会が一つのオルタナティブになるのかもしれない。昨今の”脱成長”にも繋がり、宇沢弘文の思想は今も生きていると感じる。