あらすじ
マルクス・トゥッリウス・キケロー(前106-43年)は、共和政末期のローマに生きた哲学者・弁論家・政治家として知られる。本書は、その最も人気のある二つの対話篇を定評ある訳者による新訳で一冊にまとめた待望の文庫版。「無謀は華やぐ青年の、智慮は春秋を重ねる老年の特性」、「友情においては地位や身分での分け隔てがあってはならない」──「老い」と「友情」という大切な問題についての古代の知恵が、ここに甦る。
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Posted by ブクログ
哲学者・政治家・詩人であったキケローの対話篇。「老年について」では老いることは徳のある人間にとっては悪いことではない、という話をし、「友情について」では徳に基づいた真の友情の素晴らしさ、友情の成り立ち、友情と政治の現実などを語る。
前者では老いに関連して死についてもけっこう触れていて、プラトンを思わせる霊魂不滅論、肉体からの霊魂の解放論を展開し、もしくは死すれば魂は消滅し何の感覚もなくなるのであればそれでも恐れることはなにもない、という二段構えの死への備えを論じていて面白い。
後者の友情は自分への愛から生まれたとか、友情は善き人々だけのものであるという話はあまりピンとこなかった。解説を読んで、当時の政情などを考慮するとなるほどと思うところはあった。
「老年について」では老いてからの農作の面白さが語られていて意外だったのだが(どれほど高齢であろうと支障のない営みって書いてあるが、農作業辛くないのだろうか?)、確かに現代でも定年退職したおじいちゃんたちってこぞって家庭菜園やってる印象がある。キケローは人が生まれ、成長し死んでいくことを自然の摂理であると強調しているが、やはりそのように生命の循環、自然の摂理との一体感を感じられるのがいいのだろうか。私も年を取ったらやりたくなるだろうか。