【感想・ネタバレ】世界の果てのこどもたちのレビュー

あらすじ

珠子、茉莉、美子――3人の少女は、戦時中の満州で出会った。何もかも違う3人は、とあることから確かな友情を築き上げる。やがて終戦が訪れ、3人はそれぞれの道を歩み始める。日本、中国で彼女たちはどう生きたのか。そして再び出会うことはあるのだろか――。2016年本屋大賞第3位に選ばれた、感涙の傑作、ついに文庫化。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

真ん中過ぎまで、とても読むのが辛い本であった。
3人の少女が主人公だけど、太平洋戦争下に満州へ行く子と、朝鮮人の子と、横浜育ちのお嬢様って、もう不穏な要素しかない設定。
特に、横浜で空襲に遭う時とその後、そして満州開拓団からの引き上げのくだりは本当に読むのが辛かった。

中盤を過ぎて少女たちが成長するに連れて彼女たちの人生が少しずつ上向いていき、ようやく安心して読み進められるようになった。

それでも満州からの引き上げ中に誘拐され、中国人の夫婦に買われてその子供として育てられた珠子の人生は、彼女が中国残留日本人孤児として故郷に帰ってからも辛いものだった。
こういう人がきっとたくさんいたのだろう。
とにかく言葉が分からないというのはものすごいハンデになると感じた。
帰らない方が幸せだったのではとも思うし、そういう選択をした人も多かったろう。
それでも、帰ってきたから、生涯の友を得た。

とにもかくにも、最期はハッピーエンドで良かった。

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2023年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

幼いころ満州で出会った3人の女の子の、戦中・戦後の物語。
一人は貧しい高知の村から開拓団として満州に行かされた珠子。一人は生活のためにどちらかと言えば親日の考えを持っていた両親のもと(ただし母親は学校にも行っておらず読み書きができなくても、朝鮮人としての誇りは失わなかった)、満州で仕事をしていた朝鮮国籍の美子、もう一人は横浜で事業をしている父親が満州に視察(?)に来た時に連れてこられた、お金持ちのお嬢様の茉莉。
3人は短い期間だが満州で友情を育み、国籍や立場が違っても、お互いを思いやってかけがえのない思い出を作る。その時には、そのささいな思い出が、どんなに大切なものなのか気づかない。
終戦を迎え、満州の奥地で少ない田畑を耕していただけの貧しい珠子たち開拓団は何の情報もなく見捨てられ、筆舌に尽くしがたい悲惨な目に遭う。珠子は人身売買?で誘拐され、中国残留孤児に。貧しいが温かい養父母に育てられながら、だんだんと日本人としてのアイデンティティを失っていく描写が悲しくて悲しくてたまらない。
朝鮮人の美子たち家族は、日本の敗戦により、これまで日本に協力してきたことが糾弾されることを恐れ、日本に渡ることを決断する。その後の成長では、日本で生きる朝鮮人としてのアイデンティティが問われる。しかし自分の意思で何か決められるわけでもなかった、美子たちのような終戦時子どもだった世代は、日本人とか、朝鮮人とか関係なく、ただそこで、一生懸命生きているだけだ。
一番恵まれていたはずの茉莉は、空襲で家も家族もすべて失い孤児になる。このときの淡々とした描写も涙なくして読むことはできない。
立場も置かれた状況もまったく異なる3人だが、共通しているのは、「幼いころ自分は可愛がられ、愛されて育った」という記憶だ。そして「満州で友達に優しくされた」という記憶も心の鍵となって、何か重大なことに直面したとき、正しく誇りを持って生きるための役割を果たす。

戦争の悲惨さがもちろん伝わってくる作品だ。子どもにとって、幼少期に愛され、大切にされることがいかに重要かも伝わってくる。自分以外の誰かに思いやりを持つことの素晴らしさ(自分が大切にされてきていれば、困難な局面にあってもそれができる)。
どんな状況でも、正しく生きたい、と強く思わされる。(もし自分が同じ状況に置かれたら正しい行いができるかはなはだ疑問だ、人は弱いものだ、とも思わされる)。
在日朝鮮人にもさまざまな立場の人たちがいることもわかる。日本に来た経緯にもいろいろあるし、終戦時に朝鮮半島に帰るかどうかの判断もいろいろだ。
中学校で教える強制連行の歴史なんて、間違いではないにしても、本当になんて薄っぺらいのだろう(ジレンマ)。

ここに描かれた3人くらいの世代の人たちの記憶は、もう失われつつある。本書は「一番売りたい本!」という本屋大賞ノミネート作品だが、本当に、こんな物語がずっとたくさんの人に読みつがれてほしいと思った。

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2021年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和18年9月の終わり、珠子は満州についた。
ふるさとは貧しくて、国策としての満州開拓団に強制的に入団させられたのだ。
城壁に囲まれた土地ではあったが、地味豊かな満州の土地で、ようやく彼らはお腹いっぱい食べることができたのだった。

美子は朝鮮に生まれたが、日本の支配下にあった朝鮮で、朝鮮人が豊かに暮らすことはできなかった。
父が満州に仕事を探しに行っていた数年間、美子は母と二人で毎日働きづめに働いて、ようやくコーリャンの薄いおかゆをすすれるような暮らしだった。
やっと父が迎えに来て家族で満州に移住。
日本人たちのそばで日本人と同じように学校に通い、そこで珠子と友だちになった。

茉莉は横浜の貿易商の家に生まれ、着るもの食べるもの何一つ不自由をしたことのない暮らしだった。
欲しいと思う前にすべてを与えられ、愛情たっぷりに育てられた茉莉は、お産を控えた母が面倒を見られないので、満州を視察する父についてきて、そこで珠子や美子と出会った。

3人が大人に内緒で遠出をした時、疲れて眠りこけている間に天気が急変し、川が氾濫し橋は流され、そんな中、3人はたった一つのおにぎりを分け合い夜を過ごしたのだった。
それは彼女たちの長い長い生涯のなかのほんの短い時間だったけれど、この出会いが今後の辛い人生の中で彼女たちの精神的な支えになった。

終戦後、引き上げ途中で中国人にさらわれ売られた珠子。
終戦前に日本に戻ったけれども、いわれなき差別を受け続ける美子。
横浜大空襲で家も家族もすべてを失った茉莉。

読んでいて辛くて辛くてしょうがなかった。
戦争は子どもだろうと年寄りだろうと病人だろうとお構いなしに、というよりも弱者により激しく試練を与える。
大人が子どもを食い物にし、自分が生き延びるために他人を踏みつける。
抵抗できず、目を逸らすことも出来ずにそれを見る子どもたち。

戦争中よりも、戦後の生活の方が辛い。
日本人であることを忘れ、中国人として過ごしていた珠子が、後年、中国残留孤児として日本に帰って来るが、日本語を話せない彼女たちは働こうにも職種が限られる。
せっかく家族と再会できても、会話を交わすことすらできない。

空襲から一人生き残った茉莉は、近所の人たちに畑の野菜を奪われ、防空壕に隠していた家財道具いっさいも奪われ、手に握りしめていた一粒のキャラメルすら大人に奪われたことが一生残る心の傷となった。
しかし反面、戦争に巻き込まれて死んでいった家族のことを思う時、自分だけが幸せになることができず、プロポーズを断る。

戦争が終わっても、ずっとずっと戦争の影が彼女たちを追いかける。
どこまで傷つけられなければならないのか、苦しくて悔しくて、読みながら唇をかみしめる。

だけど彼女たちは、少なくとも家族に愛されて育った過去がある。
だから生きてこられたのだと思う。
そしてたった一度、3人がひとつのおにぎりを分け合ったこと。
一人占めせず、小さい子に多く分けて食べたおにぎり。

茉莉の生き方に頭が下がる。
戦後、弱者として虐げられながらも決して俯くことなく胸を張る。
同じ状況に陥ったら、私はこう強く生きて行けるだろうか。
真っ先に死んでしまうか、それともあさましい行いをしてしまうのか。

どんな大義名分があろうとも、弱いというだけで踏みつけられる世の中は間違っていると強く思った。
ネタバレし過ぎと思われるかもしれませんが、ネタではなく、この作品の世界すべてをまるごと味わっていただきたいと思いました。

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2021年03月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

戦時中の3人の女の子の物語。満州で出会い、別れ日本と中国でそれぞれの道を歩む。茉莉にとって、もう二度と戦争をしないということは、もう二度と、母や父たちが焼き殺されたりしないということだった。そんなことを子供に思わせてしまう。恐ろしい。ただただ恐ろしくて、悍ましい。それが戦争ということを思い知らされる。そして、異国から戦争の為に移らせれ暮らすこと。その難しさも。
力のない子どもに、戦争は容赦がない。そんな戦争がもう二度と起きてはならない。

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2025年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2016年本屋大賞第3位。
戦時中の満州で出会った珠子、茉莉、美子、3人の少女の、ほんのひとときの間、一緒に遊んで過ごしただけの3人の友情。
その後の壮絶な人生。
「中国残留孤児」言葉だけは何となく耳にしていたが、こうゆうことなのか、、と深く知る事ができた。
「死」が日常過ぎて、読んでいて辛く重く、悲壮な表情の読者タイムだった。
ただ、ラストに珠子が日本の産みの母との、、そのシーンは号泣、、。
北朝鮮拉致被害の横田さん夫妻を想起させた。
なんとも重みのある小説だった。

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2024年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれの場所で生まれ、
それぞれの生き方をしてきた3人の少女の物語。

読んでいてつらい場面もたくさんありましたが、
今を生きる私たちだからこそ
知っておかなければならないことも
たくさんあると改めて感じました。
私たちが生きている時代には、
様々な人が築いてきた過去があるからこそ
成り立っているということを忘れてはならないと
感じました。

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こういった原作がワンクールのアニメ化になってもいいと思うのだがなぁ。。(映画だと端折られるから難しい)

戦争の話やイメージはあるけれど 戦後どうだったかというのは割と知らない

江戸川乱歩の「芋虫」を読んだときは設定に驚いたが当時はそういった人は勿論いただろうし 

ちばてつや氏や赤塚不二夫氏による満州引き上げについて既読であったが 7割が亡くなったというのは凄まじい
また 関東学院 大岡川 黄金町など身近な地名での空襲
修学旅行が広島 沖縄とそれぞれ歴史を調べたけれど 自分の住む場所が戦時中どうだったかこそ知りたかったかも

また在日韓国人の歴史についても無知であった
中国や日本にいる間に祖国が二分され 帰国したのが北朝鮮側とは。。

満州へも北朝鮮へも 先陣切った人が止めても向かってしまうというのは 本当に情報は大切だけれど 当時はどうやって情報を入手できるかが困難で。。

フィクションだけれど 彼女達が家族に恵まれて良かった

こどもってある意味残酷でもあるけれど 反対に差別なく同じヒトとして接することも出来るのだなぁ と改めて

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2022年05月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

描写があまりに辛くて読めない。けれど、読まないといけない。どれだけむごいことか、知らない世界を知って、もう二度と起こしてはいけないと心に刻まないといけない。

日本に戻って、空襲で家族を亡くして孤児となった茉莉。
人買いに攫われ、日本人であることを忘れ、中国人として生きていくこととなった珠子=美珠。
故郷は分断され、在日朝鮮人として過ごすほかなくなった美子。
三者三様、どの道もつらい。
私たち、特に日本人はすぐに「〇〇人」と言いたがるけれど、これを読めば、それがいかに人を傷つけるかが分かります。自分のルーツは自分だけが知っていればいい。どんな人でも幸せに生きるべき。

もう一度読むのはしんどいです。でも、見ずにいたことに目を向けるきっかけになりました。

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2022年03月21日

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