あらすじ
文学史そのものを小説にする「日本文学盛衰史」の次なるテーマは「戦後文学」。誰にも読まれなくなった難物を、ロックンロールやパンク、ラップにのせ、ブログやtwitter、YouTubeまで使って揉みほぐす。そんなある日、タカハシさんは「戦災」に遭う……。
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Posted by ブクログ
著者の身辺の出来事、中でもそれらのものから自らの感性の琴線に触れるものを抽出しつつ「文学の現在」を問うおもしろさ。
宮崎駿監督と会った際の「サイタマの光る海④」での「音」の下りには、行間から立ち上ってくるイメージに、えも言われぬ懐かしさを覚えた。
「タカハシさん戦災に遭う」では、東日本大震災に際して、どう言葉を紡いでいけばいいのかと煩悶する著者の真摯な姿に、心を打たれる。
Posted by ブクログ
日本文学を巡る破天荒な長篇小説として話題を集め、伊藤整文学賞を受賞した「日本文学盛衰史」の続篇。
前作で度肝を抜かれ(こんなのアリ? という意味で)、本作も面白く読みました。
内田裕也が登場するわ、ラップやパンクが出て来るわ、ツイッターで小林秀雄や大岡昇平、石川啄木、中原中也が出てきてつぶやき出すわ、終盤は東日本大震災についての論考、さらに震災と原発事故に材を取った短編と、相変わらず自由奔放。
次は何が飛び出すかのかとワクワクしながら読みました。
ところで、ぼくは著者の文学観が好きです。
本作には、こんな記述があります。
□□□
なになに?
文学者はそんなつまらないことはしないって?
その代わりに、もっと高尚なことをするって?
たとえば、小説を書くこととか?
そんな「常識的」なことをいってるからダメなんだ。
そんな「健全」なことをいってるからダメなんだ。
なぜなら、おれの考えでは、文学というものは、なにより、
真面目な人間(読者)を困らせるもの、
そんなものと付き合ってることが知られると恥ずかしいもの、
消費も消化も理解もできないもの、
見て見ぬふりをしておきたいもの、
であるべきなんだ。
いままでもそうだったし、いまも、これからも、そのことに変わりはない。
それが、文学というものの、いちばんわかりやすい「あり方」なんだ。
そして、それは、要するに、
内田裕也みたいなもの、
ってことなのだ。
わかりやすい説明でしょ。
□□□
文学とは、内田裕也みたいなもの。
胸を撃ち抜かれました。