あらすじ
今も昔もお金の貸し借りには、かたちは違うとはいえ一定の秩序が存在していた。だがその一方で600年前の中世社会と現代社会の金融とでは、決定的な違いが存在していたこともまた確かである。その最たるものが徳政である。貸していたお金がなくなるなど、今では詐欺行為と同等かそれ以上の悪辣きわまりない行為だと考える人がほとんどだろう。だが中世社会ではそれが徳政という美々しい名のもとで行われていた。(はじめにより)
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Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 中世とは何か~債務破棄が徳政と呼ばれた時代
第2章 正長元年の徳政一揆、室町幕府を飲み込む
第3章 法と法のシーソーゲーム
第4章 室町の格差社会
第5章 過剰負荷社会の誕生
第6章 「大法」に飲み込まれる人々
第7章 接触する法と社会
第8章 「裁定者」の誕生
第9章 分断される一揆
第10章 徳政に侵食される社会
第11章 貸借・土地売買と徳政
第12章 シーソーゲームの終わり
終章 「新しい人」の登場~文明の転換期としての戦国時代
<内容>
意外と大部である(310ページ)。ただ、「徳政令」をキーワードに中世から近世へと転換していく室町社会を活写している。室町時代は混沌とした時代だとは思っていたが、なるほど貨幣経済の発展に社会が付いていけず、そこが「徳政」の生まれる訳があったようだ。授業で使うには専門的すぎるが、高校の日本史教師はこのレベルを知っておいた方がいいのではないか?