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今も昔もお金の貸し借りには、かたちは違うとはいえ一定の秩序が存在していた。だがその一方で600年前の中世社会と現代社会の金融とでは、決定的な違いが存在していたこともまた確かである。その最たるものが徳政である。貸していたお金がなくなるなど、今では詐欺行為と同等かそれ以上の悪辣きわまりない行為だと考える人がほとんどだろう。だが中世社会ではそれが徳政という美々しい名のもとで行われていた。(はじめにより)
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Posted by ブクログ
【徳政令が出たという情報は、共同体の利益以上に個人の利益追求衝動を刺激した。私利私欲が仲間同士の信頼を侵害しはじめ、その結果、利息附替銭という便利な経済慣行を混乱させるに至ったのだ】(文中より引用) 中世日本における劇薬とも言える「徳政令」。大規模な徳政一揆の内幕を探りながら、徳政令とその需要の変...続きを読む容に迫った作品です。著者は、京都女子大学の教授を務める早島大祐。 徳政令という劇薬の副作用が社会の信用や信頼を食い破っていく様が描かれてお見事。特定の政策というのはその前後の流れに置いてみないと効果の評価が難しいんだなと感じました。 思った以上にスリリングな結末でした☆5つ
当初は求められていた徳政令が、やがて忌避されるようになっていく――つまり借金は返さなければならないというのが常識になるまでの過程が描かれている。徳政令は次第にその性格が変容し、世の中の諸関係において「信頼関係」を崩壊させて、社会を混乱に陥れていく――中世から近世への移り変わりを徳政令をテーマに描いた...続きを読む目から鱗の一冊。
これ面白いです。 徳政令を中心に、日本の社会の変遷;特に政治と経済について説き明かす。金融システムや契約制度の萌芽も中世(室町期)だったことがよく分かる。 人間が自然をコントロールできないからこそ、徳政令だったわけだけど、社会が進展し経済システムや金融制度を確立していこうって時にシステムを壊すような...続きを読む借金棒引き=徳政令はまずいわな。一方で徳政令があるせいで、それを回避するための複雑な契約制度が生まれたってのには笑っちゃう。昔も今も人間の考えることは変わらないね。
中世全般の金融、財政、社会構造、政治を丁寧に紐解いていて、しかも具体的な事例が挙げられているので抽象論で迷子にならず、読み応えがあるのに最後までわかりやすかった。
室町から戦国時代にかけて社会に大きな影響を与えた債務破棄としての徳政を扱い、政治と経済の変化によってその性格が変貌していく過程を追う内容。徳政を通して見る社会思想の転換に関する考察が興味深い。
室町幕府がいかにして崩壊に向ったか、徳政令の背景となる社会情勢を通じて理解が深まった。現代の常識では理解しづらい徳政令だが、多元的な法が存在した中世だからこそ生まれた。徳政令が忌避されるようになるとともに法が一元化したのが近世であり、現代につながる変革の時期が戦国時代だった。
鎌倉末期から戦国末期にかけて出された徳政令だが、その中身と受容状況は時代を反映して変わっていった。当初は純粋に徳のあるものと思われていたが、最終的には忌み嫌われるものになった。 元々は農家の季節性、種籾と収穫の時期的量的な差異を埋める地方的なものであったが、室町の京都の中国の銅銭を用いた貨幣経済の発...続きを読む達と、放埓な政権を支えるために金融的要素が増してくる。延暦寺の息のかかった土倉が京では過半を閉めるようになる。また足利義持以降は政権基盤が弱くなり、各地で騒乱が勃発するようになると軍事的基盤を支えるため、牢人たちの略奪を追認する形の徳政令が生まれる。そうなると人々の信任は崩れ、経済の循環が阻害されるようになり、徳政令が忌み嫌われるようになり、また軍事的動員を自らの権力、政策によって行うことが富国強兵につながった信長、秀吉の頃には見られなくなっていく。
徳政令という中世の「野蛮な」債務者救済方法が、金融事情や政治情勢に変遷に伴って、意義も救済者も変化していき、次第に地域の絆も蝕んでいき、忌み嫌われる対象になっていく過程を描いています。 室町時代から戦国時代の、経済、財政に関して、全く知らなかったので、興味深く読ませていただきました。
徳政令が、鎌倉時代の武士の借金を免除するものから 農民が一揆で借金をなくすために要求するものになり 最終的に兵士の略奪を追認するものになる過程を追った本
室町時代の徳政令を通じて、中世世界の変化と混乱を描き出している。歴史だけでなく法哲学を含む内容はなかなかのボリュームだった。
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