【感想・ネタバレ】蹴爪のレビュー

あらすじ

異国の少年たちの物語のはずが、これは、"ぼくたち"の姿だ――。デビュー作「甘露」が芥川賞候補になった新鋭、待望の初小説集!闘鶏場で胴元を務める父親が、悪魔から村を守る祠をつくる責任者となった日から、ベニグノの周囲は少しずつ変わり始めた。幼なじみのグレッツェンの大切な鶏が殺され、島で殺人事件が起こり、地震で祠が倒壊し――。東南アジアの島の少年を襲う熱くて不穏な暴力を描いた傑作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2編。共通するのは、兄からの暴力(が振るわれる現実と、そういう嘘をストーリーとしてつくこと)、島の中の出来事であること、貧困。
ともに舞台は海外だ。書きたいことを書くときに日本を舞台にすると嘘くさくなる、そういう題材があるのだろう。
数十年まえは真正面から向き合えていた題材に、迂遠な手段を使ってでも直面しようとする作者。
 「蹴爪(ボラン)」
読むことで、胃に重油を流し込まれたような。
中上健次「一番はじめの出来事」を思い出していたら、どうやら作者は中上健次にも影響を受けているとか。
 「クイーンズ・ロード・フィールド」
こちらは読んでよかった、と素直に思った。
最高にエモい台詞「わたしのだいじちゃんだからね、ひとりじめなんだ」は一生忘れたくないし、語り手の気づき「人がひとり死ぬということは、その人が周りの人と交わしていた親密な言語がひとつ滅びることだ」も、憶えて都度反芻したいものだ。
ただ単にチンコ出すだけじゃなく、assholeに対し男3人が揃ってチンコ出す、のが、うーんなんというか意義深いというか感慨深いというか。

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2019年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

鴻巣友季子の2018年のベスト。
フィリピンの島と欧州の島を舞台にした新鋭作家の作品集です。
表題作の舞台は、顔見知りばかりで、気安さと息苦しさが同居するフィリピンの村。閉塞した小世界をかけめぐる出所不明の噂、くすぶる悪意、やり場のない怒り、煽られる不安、なし崩しになる望み…
「ボラン」とは闘鶏が脚に付けるナイフのような武器のこと。

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2018年12月31日

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