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異国の少年たちの物語のはずが、これは、"ぼくたち"の姿だ――。デビュー作「甘露」が芥川賞候補になった新鋭、待望の初小説集!闘鶏場で胴元を務める父親が、悪魔から村を守る祠をつくる責任者となった日から、ベニグノの周囲は少しずつ変わり始めた。幼なじみのグレッツェンの大切な鶏が殺され、島で殺人事件が起こり、地震で祠が倒壊し――。東南アジアの島の少年を襲う熱くて不穏な暴力を描いた傑作。
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Posted by ブクログ
タイトルの蹴爪(ぼらん)とクイーンズ・ロード・フィールドの2作。 蹴爪(ぼらん):南国の島に暮らす主人公ベニグノの物語。島で行われる闘鶏場と祠を作ろうとする広場舞台に、いろいろな登場人物とのとの人間模様。暴力が主題かと思わせるところどころの描写は好ましく思えませんでした。大人びた子供の主人公と子供じ...続きを読むみた大人の浮浪者が同年齢かのようで、登場人物の個性が描き切れていないように感じました。こちらだけでは★2。 クイーンズ・ロード・フィールド:スコットランド弱小サッカーチームのサポーターである幼馴染4人組の物語。テンポよく構成され読みやすい良作。主人公の妻となる女性、脚に障害を持つその妹、姉妹が亡くなってしまう展開は残念に思いました。
「蹴爪」 ベニグノの絶望。 絶望は暴力につながる… この後ベニグノはどうなるのか。 「クイーンズ・ロード・フィールド」 こちらの方が穏やか。翻訳小説を読んでいるようだった。
「蹴爪」 どこか異国の遠い島に暮らすベニグノ。父親は闘鶏場を営んでいる。兄は頭が良かったのにお金がなくて進学クラスには通えなかった。 島のお金持ちの娘・グレースと仲良しなのだが、ある日エクエクと名付けられた彼女のお気に入りの鶏が闘鶏に出されることとなってしまう。 エクエクをなんとか助けたい、戦い方を...続きを読む教えてくれと、島の墓地に暮らす浮浪者ジェスに請う二人だったが、結局なす術なくエクエクの闘いを見ていることしかできなかった…。 貧困、殺人、地震、暴力、まだ幼い少年であるベニグノにふりかかる理不尽。強くなりたいという彼の姿を最後まで鮮やかに書いていました。 「クイーンズ・ロード・フィールド」 イギリスの片田舎に住む少年少女たちの物語。アシュリーには肌の色、ロベルトには名前、モリーには障害のある妹と、それぞれ悩みを抱えているが主人公のクレイグだけは何も無いため、兄から暴力を振るわれているという嘘をついている。 13歳で出会ってから、26歳、39歳と、彼らがふざけ合い傷つきながらも一緒に大人へ成長していく様子に、私たちはキラキラとしたかけがえのない青春を垣間見る。 可能性の限界や、夢の終わり、愛する人の喪失。大人になるということは、そうした辛い現実を受け入れるしかないということでもある。 それでもなお、自分たちに残っているもの。記憶や馬鹿げた思い出。変わらない、弱ることのない、光のようなもの。 すべてがないまぜになって思わず泣き笑いしてしまう、ほろ苦くも優しいラストでした。 洋画でみたい。モリーはスカーレット・ヨハンソンあたりで。
2編。共通するのは、兄からの暴力(が振るわれる現実と、そういう嘘をストーリーとしてつくこと)、島の中の出来事であること、貧困。 ともに舞台は海外だ。書きたいことを書くときに日本を舞台にすると嘘くさくなる、そういう題材があるのだろう。 数十年まえは真正面から向き合えていた題材に、迂遠な手段を使ってでも...続きを読む直面しようとする作者。 「蹴爪(ボラン)」 読むことで、胃に重油を流し込まれたような。 中上健次「一番はじめの出来事」を思い出していたら、どうやら作者は中上健次にも影響を受けているとか。 「クイーンズ・ロード・フィールド」 こちらは読んでよかった、と素直に思った。 最高にエモい台詞「わたしのだいじちゃんだからね、ひとりじめなんだ」は一生忘れたくないし、語り手の気づき「人がひとり死ぬということは、その人が周りの人と交わしていた親密な言語がひとつ滅びることだ」も、憶えて都度反芻したいものだ。 ただ単にチンコ出すだけじゃなく、assholeに対し男3人が揃ってチンコ出す、のが、うーんなんというか意義深いというか感慨深いというか。
鴻巣友季子の2018年のベスト。 フィリピンの島と欧州の島を舞台にした新鋭作家の作品集です。 表題作の舞台は、顔見知りばかりで、気安さと息苦しさが同居するフィリピンの村。閉塞した小世界をかけめぐる出所不明の噂、くすぶる悪意、やり場のない怒り、煽られる不安、なし崩しになる望み… 「ボラン」とは闘鶏が脚...続きを読むに付けるナイフのような武器のこと。
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