【感想・ネタバレ】漢字を楽しむのレビュー

あらすじ

私たちの漢字の常識は間違いだらけ!? 「比」の画数は? 「口腔」「垂涎」「憧憬」本来の読みは? 「環」の下をはねると間違い? 漢字の蘊蓄を楽しみながら学べる魅力的な一冊。

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Posted by ブクログ

 最近テレビなんかでみかけるおもしろ漢字の覚え方とか、漢字のなりたちについての豆知識とかそういう本かなと思ったのですが、むしろ漢字についてのエッセイという雰囲気でした。作者は中国語学を専門とする大学教授なのですが、漢字を研究する人の立場で見ると、現在の漢字をとりまく環境はどううつるかというような。

 やっぱり面白かったのは、漢字の書き取りについての章ですね。
 漢字テストの採点基準について色々書かれています。採点基準はどうやって決められているのか、高校生が調べた結果を紹介しながら作者の考えも述べられているのですが、結論としては現在の漢字テストはおかしいというものでした。

 国が使っていい漢字を制限したり、活字を作るときはこの字体を使いなさいという基準を出したことで、それこそが唯一絶対の正しい漢字だという認識を広めてしまったのだそうです。常用漢字とか当用漢字体表というものがそれだそうです。
 そして、そうした表には、これは活字であって手書きする分には必ずしもこのようにはならないという注意書きがあるのだとか。その例として、木の縦の画をハネたものとトメたものと両方が載っているのだそうです。確かにお習字だと、糸も縦をハネて書いたり、保険の保の木の部分をカタカナのホみたいに書いたりしますね。
 活字と手書きを同じレベルでとらえるのが間違いだし、だから漢字テストで木をハネて書いたら×なんてとんでもないし、そうしたことも知らずに教育に携わるなんて、とんだ怠慢ではないかという批判的な論調で終始すすむこの章。

 字というのは情報伝達の手段なんだから、読めればいいんだと。土と工のように少しの違いが意味のちがいになってしまう字は厳格に区別するべきだが、木の縦の線をトメようがハネようが木は木としか読めないんだから、そんなことに目くじらたててテストするほうがおかしいじゃないかと書かれてします。
 高校生の調査でも、採点基準は先生によってバラバラだったんですよね。

 小学生の時の先生がトメハネハライにうるさい先生だったので、私もそれに拘るようになってしまったのですが、そもそもの基準が怪しかったなんて、頭を殴られたようなショックですよ。

 学校で習ったからとか、本で読んだからとか、手にした知識を鵜呑みにするのは危ないことなんだと改めて思いました。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

≪目次≫
はじめに
第1章   漢字を読む
   1   難読漢字を楽しもう
   2   力士の「しこな」を読む
第2章   漢字を書く
   1   漢字の「書き取り」を考える
   2   時代ごとの漢字の規範
   3   さまざまな漢字を楽しもう
第3章   漢字を作る
   1   漢字を作った人びと
   2   アイディア漢字を楽しむ
あとがき

≪内容≫
京都大学の漢字文化史に詳しい教授の著書。いろいろと初耳の話が多く、蘊蓄が増えた。
たとえば、「剽軽(ひょうきん)」は、「軽はずみ、浮かれ者」ではなく、中国では「すばしこい」なのだとか、「閖上(ゆりあげ)」(宮城県名取市の地名、東日本大震災の津波でよく出てきた)は、伊達の殿様(綱村)が一存で決めた国字ぽいが、実は中国でも漢字はあった(唐の則天武后が作った「則天文字」。因みに「水戸光圀」の「圀」もそうだとか)など。
でも、著者の一番いいたいのは、小学校では漢字の書き取りの際に「とめ」「はめ」にやたらうるさいが、その根拠は実はない(つまり、「とめ」「はね」にそんなにこだわる必要はない)。書き順も同じ、との部分。自分もそう思っていたので、納得した。

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2012年05月20日

Posted by ブクログ

 漢字を楽しむ
 この4月からNHKラジオの中国語講座を担当している。その4月号の最終ゲラが出た段階で、校正者の一人から、「テキストの漢字と辞書の漢字の字体が違うが、どうしますか」という質問がきた。たとえば、“买”の字の最後の画の点は、辞書では上にくっついているのに、テキストは離れている。“月”や“真”の中の短い横棒は辞書ではくっついているのに、テキストでは離れている。“女”の横棒と最後の画とは辞書では接しているだけなのに、テキストでは交差している。“了”の縦棒は辞書ではまっすぐなのに、テキストではゆるやかにカーブしている等々いわれてみればそうで、一般の辞書をみる限り、テキストで使った字とは違う。どうしようかと考えあぐねていたときに出逢ったのが本書。とりわけその第2章には、漢字の書き取りテストで間違いとされた字が実はまちがいではなく、非は明朝体という活字の字体を金科玉条のごとく振りかざし、生徒たちの字を間違いとした先生たちの方にあるという話が紹介されていた。これは実は明朝体という活字がデザイン的にあまりに発達したため、手書き文字との間に齟齬を生じ、手書き文字があたかも誤字であるかのような錯覚を与えているという問題である。「明朝」というのがフォントの一種であることは知っていても、それがどうやって生まれ、手書き文字との間にどのような差が生まれているのか、本書は音の問題、国字の問題も含め、漢字というものを再認識させてくれる好著である。


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2009年10月07日

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