あらすじ
太平の世にあって歴戦の老将は過去をかえりみ、わが亡き後の家の安泰に思いをめぐらす。側近く仕えた小姓の筆が伝える、死に臨んだ「独眼竜」の深き慮りと愛する者たちへの別れの作法。政宗に近しく仕えた小姓・木村宇右衛門可親が主君の言行を記録した『木村宇右衛門覚書』を読み解き、武人の最後の日々を描き出す。
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Posted by ブクログ
政宗の小姓としてすぐ近くに仕えた者が、その臨終に際した実際に本人が見てきたものを記録した覚え書きを元に、原文を訳して解説が書かれたもの。
70歳という、当時ではかなり長生きをし、かつて覇を競った仲間がすべていなくなり、平和な治世となった中で、『遅れてきた戦国武将』と言われた伊達政宗が、自らの死期を悟り、どのように終活の日々を送り、どのように看取られていったかが克明に書かれている。
主君(家光)に最期の挨拶をし、嫡男と伊達家と家臣たちの安堵を確認し、最期は戦国武将らしく愛刀を抱えて最期を迎える。正室が同じ屋敷内にいるのに「あなたにはみっともない姿を見せたくないから」といって奥さんは臨終に立ち会えなかったの辛すぎる!
こうやって、国を治める武将とはかくあるべき、戦国の男はかくあるべきという姿を見ると、「武士の情けじゃ!」とかいって一時の激情に流されて自分はとっととおっ死んで家臣たちを路頭に迷わせたどこぞの某アサノなんちゃらなんて平和な世の中に生まれた生っちょろいナンチャッテ武士にしか見えない。
辞世の句が
「曇りなき 心の月を先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行く」
心の月というのはもちろん伊達政宗の兜の前立てについている月のことですね。
なんともカッコいいではないですか!
もういっちょ書くと、愛娘である牟宇(むう)姫の辞世の句が
「こしかたも 知らぬ身なれば 曇りなき 月をしるべに 西へこそ行け」
さぞかし偉大な自慢すべきお父さんだったのだろうなあと。あの世にいったら大好きなお父さんに会えると思うと死も怖くはなかっただろうなあと、 読んで思わず涙してしまいました。