【感想・ネタバレ】「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦のレビュー

あらすじ

井筒俊彦は中近東やロシア、東南アジアにも視野を広げた全東洋的思想を見据え、その根底にある哲学をつかみ、拓いていく。「ある」という事態の最深層に仏教哲学の「アラヤ識」を見届け、「空」と「無」を巡ってイスラーム哲学から現代思想までもが渉猟される。井筒が生涯をかけた「世界的な視野を備えた新たな哲学」は、どんな地点に到達したのか。その哲学的営為の総体を受け止め、さらに先にある問題を見極める。

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Posted by ブクログ

「意識と本質」を1回読んでからの参考書として入手。イスラムの源泉はギリシャにあるなど、井筒さんが言いたかったことを端的にまとめていて役に立つ本だった。

斎藤慶典さんは、「私の専門は現象学だ」と言っている。
最後の「今ここで=現に」という章が現象学的見地からのものなのかもしれない。井筒さんには故意かどうかは不明だが、無視した範疇があるというのだ。井筒批判?

p232 その「尽力」を以って世界を時間として開く「機能」を有する「我」と名指されたそれは、いかなるものと考えればよいのか。この問いに、井筒が正面から向かい合った形跡はない。

この批判が客観的に該当するのかどうか、私にはわからないが。
「井筒さんの論はすばらしいが、実際の世の中の役にたっていない」と言っているように聞こえる。
しかし、私は井筒さんのすべての本は「人類にとっての宗教の定義」を考察しているとおもうので、それはそれで完成されていると思う。

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2025年06月25日

Posted by ブクログ

井筒俊彦の思想を読み解きながら、著者自身の「存在」と「認識」にまつわる哲学的な思索を展開している本です。

著者の本はこれまでも何冊か読んだことがありますが、フッサールを論じても、デカルト、あるいは西田幾多郎を論じても、つねに著者自身の考える問題へと立ち返っていくことになるので、じつのところ既視感をおぼえるところもありました。ただそれでも、井筒の言語哲学、とりわけその言語アラヤ識に著者自身の考える「充満する空」をかさねあわせ、そこから井筒のテクストにおける道元の「有事」にかんする言及などに含まれている可能性を押し広げることで、存在が「いま・ここで=現に」というしかたで一瞬ごとに開披されるという考えを展開しているところは、読み応えがあります。

井筒の言語アラヤ識論には、丸山圭三郎の欲動論と同様に、ある種の神秘的な生命論へと回収されてしまう危険性があるように感じていたのですが、本書はそうした問題点を明確にしながらもそれを乗り越えるような思索の方向性を切り開いているように感じます。こうした本書の解釈が、井筒自身の思想を正しく把握しているものなのかどうかという点にかんしては留保したいと考えますが、いずれにしても興味深く読むことができました。

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2018年12月14日

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