あらすじ
東京都西多摩で、男性のバラバラ死体が発見される。岩楯警部補は、山岳救助隊員・牛久とペアを組み捜査に加わった。捜査会議で、司法解剖医が出した死亡推定月日に、法医昆虫学者の赤堀が異を唱えるが否定される。他方、岩楯と牛久は仙谷村での聞き込みを始め、村で孤立する二つの世帯があることがわかる。息子に犯罪歴があるという中丸家と、父子家庭の一之瀬家だ。──死後経過の謎と、村の怪しい住人たち。残りの遺体はどこに!
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Posted by ブクログ
シリーズ4作目ですが、これまでと変わらぬ面白さがありました。
今回は舞台が奥多摩ということで親近感もありました。
山の中で見つかった腐乱したバラバラ死体というのはショッキングな設定ですが、このシリーズ作品では死体に集る虫がある意味では主人公ですから、グロテスクな描写も魅力の一つかもしれません。
当初は理解されず、「わけのわからないことをいう女」と見られて軽んじられる赤堀が、「虫の声」からの推理にもとづいて事件の手がかりを見つけてゆき、周囲が次第に彼女のことを意識し始める、という構図は何度読んでも爽快です。
赤堀が真相に先に気がついて真犯人に迫られ、そのことに後から気がついて岩楯刑事が慌てて駆けつける、という流れの中で、赤堀を失うかもしれないと岩楯が恐怖する様子は、これまでよりも二人の関係性が強くなっていることを強く感じさせますし、互いに信頼し合っていることもこの作品の魅力の一つだと思います。
真犯人も、たびたび捜査線上に浮上する不審者も、それぞれに狂気を秘めていましたし、その狂気の果てに生まれた「香り」が広く世界に受け入れられている、その事実を知っている岩楯たちが不快感を感じるというエンディングはこれまでのシリーズと比べても少しすっきりしない感じもありましたが、私たちの暮らす社会の中でも「知らぬが仏」ということはままあるでしょうから、ある意味でリアルなのかもしれません。
Posted by ブクログ
2020/2/21
そろそろ飽きるかと思ったけどとんでもない。
天才やな。
ここへ来てものすごい犯人像出してきた。
ゾッとしすぎて笑ってしまったわ。
無罪放免になるかもしれないけど大丈夫なん?今後どうなるん。
悪意を持って人に害をなすタイプじゃないけど悪意なく何でもやるから予測不能のヤバさよね。
んでそれ人間じゃないとアカンか?
美少年を浄化するためやったら人間じゃないとアカンのか。
でもそれじゃない浄化の仕方がいいよ。
壊れた人が壊れた人を治そうとするの怖いよ。
初めましての恐怖感やったように思う。
このシリーズ、岩楯刑事の名言も楽しみで。
今回は「幼稚な万能感に酔ってるんじゃねぇぞ」だね。
気持ち悪さを一言で表してる。素敵。
赤堀先生の奇行ハイライトはウジの雨だな。すごい。
そして前作の乾燥蟻はいまだに時々思い出して噴き出す。
日々に笑いをもたらしてくれて本当にありがとうと言いたい。
ウジやら腐乱死体やらできっと無理だけど実写化するなら岩楯刑事は江口洋介がよいと思うー。
赤堀先生はもうちょっと考える。
ボーンズやったんやから日本でもやってもいいやん。
Posted by ブクログ
今回はあとからあとから新キャラが出てこず、ある意味村のような閉鎖的な物語。
なので途中で「犯人はこいつか?」と勘が働いた人も少なくないのでは?
誰も得をしないみんながみんな独りよがりの行為から成り立った今作の事件は、ただただ胸糞が悪い。この香水は「人間の死体を使った香水?!」とかそんな内容で間違いなく都市伝説になるでしょう。
そしてちづるの名付けた「メビウスの輪」。彼女が作中で言った意味だけで考えてよいのだろうか。もっと深い意味があるように思える。
香水の匂いについても「甘いような酸っぱいような」と描写され、「匂いが進化する」と言われる、
原材料の一つは腐臭によく似た芳香を持つランとのこと。
一ノ瀬俊太郎のための香水とのことだが、進化していく匂いは、正しく彼が気持ち悪い幼虫から美しい蝶へと変態したことを指すのだろう。
しかし、その美しさゆえに女性に纏わりつかれることは、腐肉に集るハエが重なる。
美しい彼と、その腐肉ランのインスピレーションが繋がったのか分からないが、皮肉なものだ。
自分の中の神を崇拝して、起きた惨事。
Posted by ブクログ
ウジとハエにはかなり耐性ができたと思ってましたが…今回の量と群がり方は半端ないです!ハエを怖いと初めて思いました。今までの事件って、少なくとも殺す方にも殺される方にも、少しはその気持ちはわかるって、そうなる過程が理解できなくはなかったんですが、今回のは寒気と狂気ばかり感じて余り同情もできなかったかな。殺した相手のことを香料にしか思ってなくて、多分殺した認識もないんじゃないかなと。やっぱり怖い。登場人物がみんな一線を越えたような人ばかり。こういう人たちには何も通じないから裁きを受けさせるといっても…ね…。どうしようも無いのな。赤堀さん、死ななくてよかった。
Posted by ブクログ
シリーズ第4弾は、昨年個人的に何度か訪れた西多摩地域が舞台でした。山の中を散策したことを思い出しながら、あの辺りで本作で描かれた陰惨な事件があった(本作はフィクションですが…)と妄想すると、背筋に冷たいものが走ります。
捜査の展開としては、少しずつ状況が明らかになっていくも終盤まで事件の真相に直結する証拠が発見されず、遅々とした進捗だったように思います。そのため、話の吸引力がやや欠けているように感じてしまいました。
しかし、終わり近くでようやくミバエの出どころが分かったあたりで急展開。真犯人の目的とその行為(惨殺したことではなく、あるモノを作り上げたこと)のグロテスクさ・おぞましさが半端なく、そのインパクトはかなり印象に残りました。