【感想・ネタバレ】興亡の世界史 東インド会社とアジアの海のレビュー

あらすじ

17世紀のイギリス、オランダ、フランスに相次いで誕生した東インド会社。この「史上初の株式会社」の興亡を通して、世界が大きく変貌した200年を描きだす異色作。喜望峰からインド、中国、長崎にいたる海域は、この時代に「商品」で結ばれ、世界の中心となり、人々の交流の舞台となっていた。そして、綿織物や茶、胡椒などがヨーロッパの市場を刺激して近代の扉を開き、現代に続くグローバル社会の先駆けとなったのだった。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

なんでポルトガル人日本に来た?何取引した?なんでそれ取引した?など、細かいところまで、痒いところまで手が届くような本。わかりやすい。


【読書目的】
- ポルトガル・オランダが日本にやってきた理由を理解する
- 主な貿易品と貿易の利益に関して理解する

【まとめ】
- ポルトガル・オランダが日本にやってきた理由
- 大航海時代
- 胡椒・香辛料のニーズ
- 肉の保存・味付け、医薬品としてのニーズ
- 中間業者と関税がかかっており、価格が高く、直接取引したかった
- 技術革新
- 羅針盤・造船技術
- 宗教改革
- カトリックの権威復活と拡大
- 黄金の国・ジパング伝説
- by マルコポーロ「世界の記述(東方見聞録)」
- ポルトガルが先陣を切った理由(by ウォーラーステイン)
- 大西洋岸にあり、アフリカに隣接しているという地理的条件
- すでに遠距離貿易の経験を持っていたこと
- 資本の調達が容易であったこと
(ジェノヴァ人がヴェネツィアに対抗するため、ポルトガルに投資しており、リスボンで活躍していた商人の多くはジェノヴァ人であった)、
- 他国が内乱に明け暮れていたのにポルトガルだけは平和を享受し、企業家が繁栄しうる環境があったこと
- オランダが台頭した理由:
- ポルトガルの衰退
- 香辛料の入手ルートが増え、貿易の旨みが減った。
- 港の維持費が馬鹿にならない。
- 徐々に、個人貿易など広がる。管理できなくなる。
- オランダの台頭
- ベルギーのアントワープの商人、スペイン王に対抗してアムスに移る。
- 定湿地帯で農業適さないので、漁業・海運業してた
- 中には、ポルトガルのリスボンから仕入れた香辛料をバルト海沿岸に輸送するものも
- オランダとハプスブルグが戦争→イベリア半島の港町に入れなくなった。
- イギリスの私掠船のせい(イギリスvsスペインポルトガル)で、胡椒の価格高騰。
- リスボンで買付できない(他のカトリック系が独占的に買いがち)
- そして、高度な航海技術と資本が結びついたオランダ→自分たちで東インドへ!

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2020年06月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 世界で初の株式会社と言われる東インド会社。

 若い時、株屋で営業の仕事をしていたものの、歴史については全く不勉強だったため、「君、東インド会社、知っているよね?」とお客様に問われても、「はい、全く知りません!」と自信満々に断言して笑いを取るくらいしかできなかったものです。

 年を経て改めて歴史を学んでみると、なんと東インド会社が一つではない!驚きました(レベル低くてごめんなさい) イギリス、オランダ、フランスが類似のコンセプトの会社を(中身は違うけど)営んでいました。

 本作品は、そのような東インド会社について詳述した読み応えのある作品です。

 本作でためになったのは、東インド会社が隆盛を極め衰退していった時代を、各会社ごとにヒストリカルに見るのみならず、時に会社を並列に比較したり、同時代を横でヨーロッパ、東アジア・日本と、俯瞰する試みも行っていることです。縦横無尽。

 長崎の出島は、江戸時代はオランダとの貿易拠点であったことは多くの方がご存じだと思います。でも、その時のオランダはじめヨーロッパや他のアジア地域がどのような状況であったかは、なかなかピンとこないのではと思います。
 スペイン継承戦争や宗教改革を背景にイギリスの私掠船が増加、オランダはアジアとの独自の交易ルートが必要になりました。東シナ海では鎖国をしている日本の沖合で倭寇が存在感を示し、明の海禁令をよそに貿易業に勤しむ。列強は時に武力で、時に乞われて、インド、マレーシア、インドネシアに拠点を構え、交易を盛んにし、アジアでは東西が混じりゆく社会が形成されつつあった、などです。
 このような、いわゆる「横串」で歴史を見ると、歴史のうねりのようなものが感じられ面白いなと思います。
 
 もう一つ本作のカバレッジで興味を引いたのは、西洋の進出と共に必然的に生まれてくる混血児やその二世など、マージナルな方々の記録にスポットをあてていることです。
 本文ではイタリア人を父としたお春について記述しています。父親が亡くなったとたん、母・姉とともにバタヴィア(ジャカルタ)に流刑。しかし、お春はその後同じような混血児と結婚し使用人を9人使うほどの生活を営んだそう。もう一つの例は、長崎オランダ商館長と日本人女性のもとに生まれたコルネリア。このケースも父親の死後にバタヴィアに流刑(母親は再婚しており本人のみ)。本人はその後オランダ人と結婚し、財を成し、夫の死後に再婚したものの、再婚した夫と財産権でもめて最後にはオランダで裁判までしたそうです。
 400年も前にハーフが経験したダイナミックな逸話に驚くとともに、その苦労や苦難が偲ばれます。自分も外国人の連れ合いを得、ママ友達のイジリ以上いじめ以下の発言を耳にしていたので、ハーフの方々の生き方に自分の子供達の行く末を重ねつつ、シンパシーを感じながら読んでしまいました。

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 上記は内容の本の一部しか案内していませんが、それ以外にも大航海時代の先駆けとなったポルトガル商人(相当なワルです)やイエズス会(上智大学)、また彼らとムスリム商人とのやり取りなど、東インド会社の航路に当たる国々との音信も描かれています。内容はてんこ盛りなのですが、ボリュームがあり過ぎなのか、後半の7, 8章でややダレた印象がありました。

 冒頭でも述べましたが、世界初の株式会社ですが、株とか金融という観点では特段みるものはないと感じました(へーなるほどという感じ)。寧ろ商社の本性やその暴力性を見て取る好材料であると感じました。勿論、歴史の読み物として純然たる歴史ファンには諸手を挙げてお勧めできます。

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2021年06月26日

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