あらすじ
煉獄の中で、私は天上の果実を口に含んでいた……。夫を事故で失った高森悠子は、薬剤師として勤めることになった軽井沢の診療所で医師・兵藤義彦と出会う。彼もまた、妻の美冬を自殺で亡くしていた。義彦に恋心を抱きながら、好色なその義父・英二郎の誘いを拒みきれない悠子。エロス匂い立つ、長編恋愛小説。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
小池真理子作品はほぼ読んでいるが、その中でも一番と言っても過言ではないくらい、大好きな本。何度目かの再読。
ラスト1ページのためのこの約600ページがある。
静かで美しく、かつ情熱的な二人。事件はあれど、出会えてよかった。だめだと思いつつ断り切れない、英二郎の魅力が理解できなかったけども、、。
小池真理子の文章って、軽井沢の街並みに合うわ~~。特に冬。行きたくなった。
Posted by ブクログ
唯川恵が解説を書いている。
「この美しい結末に、涙することのできる自分が嬉しかった。
大丈夫,私はまだ失ってはいない。大切なものを感じる力をちゃんと持っている。
私がこの「冬の伽藍」で感じた感動を、今,読者のみなさんと共有していることをとても光栄に思う。」
うまい。この文章を読んだら,唯川恵の書いたものが読みたくなってしまう。
作家は、他の作家のよいところを見つけた時に,その作家自身も伸びるのかもしれない。違う方向へ進みながらも、別の方向も良いと思えることに自信が涌くのだろう。
「冬の伽藍」は第一部は目をつむって、黙々と読み進み,
第二部の手紙の部分まで辿り着くことが大切。
第二部の手紙が書きたいがために、第一部があったのだということが分かるかもしれない。
第三部になると、友人が主人公に変わる。著者に,壮大な構想があったことが分かる。
文学作品としての出来はいい。読者には、いろいろ必然性を不思議に思う人がいるかもしれない。人を理解するつもりがない人なのではないかと思う。人を自分の都合で判断する人には、本作品の狙いが見えないのだろう。
文学として成功しているかとい観点では、この本がベストだと思わない。技巧としてはベストかもしれない。