あらすじ
日露の脅威がせまる清朝末期の混沌に、馬賊は生まれた。混乱の中、軍閥の長となり中原への進出をうかがい、覇権を目指した「東北王」張作霖もそんな一人だった。虚飾にとらわれた従来の張作霖像を解体し、中国社会が包含する多様性にねざす地域政権の上に馬賊を位置づけ、近代へと変貌する激動の中国と日中関係史を鮮やかに描き出した意欲的な試み。
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Posted by ブクログ
澁谷由里「馬賊の「満洲」 張作霖と近代中国」(講談社学術文庫)
張作霖について一般に知られていることは、彼が馬賊出身で日本の協力の下で東三省を実質支配していたが次第に反日傾向を強め1928年に関東軍に爆殺され、彼の息子の張学良が国民党を支持したことが満州事変につながった、くらいだろう。本書はそもそも馬賊とはなにか、張作霖はどのように馬賊になったのか、東三省で清朝政府、日本、ロシアが、それぞれ馬賊をどう利用していたか、そのなかで張作霖が清朝政府にどう食い込み、軍閥として
東三省に覇権を気づいたか。その張作霖政府の中での馬賊仲間出身者と日本に留学した将校、さらに東三省の軍学校をでた将校の間の葛藤、さらに政府の民生部門を牛耳る警察官僚の役割などが興味深く語られる。
また軍閥の宿命として中国統一を目指さねば権力の正統性が問われ、かといってそれにかまけると財政が揺らぎ地域統治の足元が揺らぐという問題がある。そういった視点で奉直戦争や対北伐の動きをみるのも面白い。